神様ゲーム

神様ゲーム (講談社ノベルス)


講談社ミステリーランドという少年少女向け推理小説のレーベルがありまして、その作品群の中に私の好きな麻耶雄嵩さんが書き下ろしている作品が一つありました。へーそうなの文庫化したら読んでみようかしらぐらいの気持ちでいましたが、待てど暮らせど文庫化しない。いや、ノベルス版というまだ微妙に高いやつには2年前になりました。そして気付くと2005年の刊行からもう9年経ってしまいました。…もう、いけず!
簡単に調べてみましたが、講談社ミステリーランドの書籍ってノベルス落ちや文庫落ちをあまりしないんですね。早く言ってよもう。そんなどうでもよい話。
さてそんな感じで本日は「神様ゲーム」でございます。
なかなか文庫化しないなと長年調べていたおかげでこの本の評判を知る機会は多かったのですが、なにやら子供向けレーベルなのに内容が子供向けじゃないとか気味が悪いとかの人気ぶりは前々から窺っていました。ようやくこの目で内容を確かめることが出来たのですが、評判に違わないいつもの作者さんが炸裂していまして笑うしかねぇ面白さで非常に満足でございます。
お話は小学4年生の芳雄くん目線で書かれていまして、優しい言葉遣いと多めの平仮名(単行本では漢字にルビもあるみたい)で子供でも大人の私でも気軽に読めるようになっています。主人公の芳雄くんはクラスの友達と少年探偵団を結成して放課後に良く遊んでいるのですが、最近は近所で起こった連続猫殺し事件にみんなの関心が集まっている様子です。普通なら真相を求めて捜査や推理がこの後行われると思われますが、このお話ではもう一人、クラスメイトの鈴木くんという推理物の最終兵器のような存在がぽつんと配置されることになります。掃除の時間だけ言葉を交わす鈴木くんの冗談みたいな話を冗談半分で聞くところによると、鈴木くんは神様ですべての物事が解り、暇つぶしの一環で小学生をやっているそうなのです。彼が神様かどうかは分かりませんが、彼がぽつりと教えてくれる事件の犯人や事件の詳細はいったい何なのか。警察の発表、芳雄くんが辿り着いた推理、そして鈴木くんが話してくれた詳細は内容がすべて食い違います。もし鈴木くんが本当に神様なら?もし鈴木くんの教えてくれた事件の詳細が真実だとしたら?鈴木くんのしたことがすべて本当の事だったとしたら?
猫殺しだけでなくて殺人も起こってしまう今回の事件で、ミステリー作家としてのキャリアも長い作者さんの手腕が存分に発揮された、二転三転する事件の謎が大いに読者を楽しませてくれます。子供が読んだらトラウマになるとの話も聞きますが、確かにクラスメイトが死ぬキツイ描写とかはありますが表面的な部分だけ読んで理解したのならちょっと後味の悪い話だったぐらいで済むのじゃないでしょうか。大人の私でも結末は最初意味が解りませんでしたし(私が小学生以下かどうかは今回関係ありません)。でも神様の鈴木くんの言葉は全部真実だとし、芳雄くんが考えてくれたトリックを使い、警察の発表にも矛盾しないストーリーだとこんな感じで辻褄を合わせることができるなぁと自分なりに理解したのですがやっぱり内容が理解できません先生!このお話は子供には理解できないじゃなくて、子供が理解できたら嫌だという願望を込めて、先人たちは子供向けではないと評したのではないかと思っています。
後味が悪いお話かもしれませんが、私はこの意地の悪さにどうもニヤニヤしちゃって面白かったのです。