【柴村 仁】プシュケの涙

プシュケの涙 (講談社文庫)

好きな本 ぼしゅう12月のコメントより。
>切なさの残る、青春ライトノベル→「プシュケの涙」柴村仁著。ジャンルはミステリーです。青春のみずみずしさやきらめきが感じられます。少女はなぜ自殺したのか、その真相が明かされた時、なんとも言えない気持ちになります。


おすすめありがとうございます。その2。
なんだかいろんなレーベルから似たタイトルが出てるなぁとの印象のこちら「プシュケの涙」。昔 電撃文庫で出てなかったけ?と探ってみれば、電撃文庫メディアワークス文庫講談社の3レーベルから月日をおいて同じ本が出ているようです。迷う事1秒、せっかくだから一番新しい講談社文庫版を選ぶぜ!と大した違いはないだろうとの独断で立ち向かいます。いざぁ。
お話の始まりは、暑さ厳しい高校の補習授業中の教室から。ライトノベルですので中高生が主役で学校が舞台なのはノルマみたいなものですから、特に目立つ事のない平凡なスタートと言ったところでしょう。ここから多くの学生たちが異世界へと旅立ち、ウブな美少女たちに出合い、異能の力に覚醒することになり、各々の物語を紡いでいくのです。今回のお話で偶然居合わせた少年少女たちは何を経験することになるのか。どんなお話になるんだろうとの思いを秘めて捲った物語の冒頭の場面、教室の窓から外を見るとそこには一人の女の子が墜落死する姿が!夏休み中の学校で飛び降り自殺を図ったクラスメイト、吉野彼方の死からこのお話は幕を上げる事になりました。後日重苦しい空気が立ち込める教室に、特定の話題が禁忌のように扱われる学校内。奇跡も魔法もないのに現実だけはしっかりあるこの世界で、偶然落下する瞬間を見てしまったクラスメイトの榎戸川は苦悩する事になります。え、このお話を本当にライトノベルでやったの?と困惑する私もここに一人。
吉野彼方の死後、クラスメイトの榎戸川と彼女の死に疑問を持つ生徒、由良の二人が出会う事によってじわりじわりとお話が前へと進んでいきます。でもじわりじわりと見せかけて、お話が進むときは一気に進みます。え、これもうミステリーのオチなんじゃないの?と思う第一の展開が物語の3分の1ほどでお目見えした時は驚きました。少女の死に纏わりついていた黒い影がはっきりと形として描写されるのです。見えている決して明るいものではない真相。でもはっきりとはまだ描写しない結末。不安な気持ちだけを煽られてワタクシは一人おろおろと進むだけです。
この先辛い事しかなさそうだなぁと思いつつも、事件のエグイところを果敢にぐいぐいと攻めて行く由良くんの行動原理は、同じ美術部所属の吉野彼方の描いていた絵に見惚れていたから、そして「(その絵が)描きかけだから」。自殺を疑うには感情に訴えるものはあっても根拠としては確かなものではありません。でもそれを信じてる人間に根拠のなさを反論するのもなかなか難しいこの設問に正面から挑まざるを得ず、答えに窮し、やがて燻りだされる人間の、真相の、姿が!物語の半分にして!第一部完!あれ、終わった?残りのページは?
突如始まる第二部として、一人の少女が素敵な男の子と出合い親睦を深めるお話が開始されます。恵まれない家庭の事情で実生活に暗雲が立ち込める中、一筋の光を差し込んでくれた一人の男子生徒との出会い。家庭内暴力、クラスメイトからのいじめ、それらを一つずつ男子生徒と共に乗り越えて行くたびに深まる絆とより良い未来への希望が容赦無く読者の心を抉ります。この謎の少女と謎の男子生徒が幸せになればなるほど、何故か心は沈鬱になって行くという不可思議な現象が私には理解できませんでした。(現実逃避)
まぁ第二部は読み始めてすぐに分かったけどね。はは〜ん?作者(俺を)殺る気だな?ってね。