【はやみね かおる】都会のトム&ソーヤ

都会のトム&ソーヤ(1) (YA! ENTERTAINMENT)



好きな本 ぼしゅう12月のコメントより。
>クスッと笑いながらサクッと読める本→「都会のトム&ソーヤ」はやみねかおる著。内藤内人(おバk…肉体派…ではなくサバイバル派)と竜王創也(メガn…頭脳派)の凸凹中学生コンビが活躍する、冒険活劇(??)です。はやみねさん独特のユーモアが合う人は面白く読めます。



おすすめありがとうございます。
「都会のトム&ソーヤ」。児童書にでも区分けされる本でしょうか。主人公の内藤内人くんと竜王創也くんの中学生コンビと同級生か、またはそれよりちょっとしたの小学生くらいが対象という感じのお話です。読み終わった後に簡単に検索したところお子さんが楽しく読んでいたというようなお母さんからの感想が結構見つかったんですが、心だけは中学生並みのいい年した大人が真っ向からこの本に立ち向かいます。いざ。
タイトルが「トムソーヤーの冒険」のパロディになっていますから、元ネタのように主人公の子供が近所から小さな冒険や大きな冒険に出かける様子が簡単に想像できますね。
お話は自称普通の中学生、内人くんが塾の帰りにクラスメイトの創也くんを見かけたことから始まります。有名企業グループの跡取り息子で教室じゃちょっと話しかけ辛い創也くんがあんな時間に何をしていたんだろうと翌日声をかけたところ、まさか見られていたとはと帰ってきたのは思わぬリアクション。なにやら秘密の匂いが漂ってきたところで、さあお話の始まりです。
プライドの高そうなメガネ男子の創也くんとクラスでそこそこ人気者の内人くんが初めて出会い、友情を育むきっかけとなる場面へとまずは移行ですね読み進めると、呼び出した廃墟ビルで内人くんを数々のトラップで出迎える創也くんの姿がそこに!いきなりクラスメイトを地雷原に誘い込むなんて…というか学校一の秀才が放課後こそこそとそんなの作ってたんだな…といろんな意味でインパクトのある創也くんに対するは、お前どうしてそんな道具をすぐ思いつけるんだよと手近な廃材を加工してトラップを回避していく内人くん。お前ら打ち合わせも無いのに息ぴったりだな!と筋書のないドラマは見事大成功しまして二人の奇妙な交流が生まれることになります。
それからは主に秀才のはずの創也くんがいろんなところに首を突っ込んでトラブルを起こし、内人くんがそれに巻き込まれながらも自滅しそうな相方をサポートするという役割分担で進んでいきました。というか創也くんは頭脳派っぽいくせに、しょっちゅうピンチに陥る印象があるのはどういうことなのいったい。そして思いっきり迷惑を被りながらもやれやれ仕方ないと見捨てて置けない内人くん…。んもぅ、二人とも仲が良いんだから。
ピンチの時こそ力を発揮する内人くんがお話の良いエッセンスになりまして、ハラハラどきどきの絶体絶命な場面でも読者は同時にわくわくも感じちゃったりするんですよね。下水道でネズミの大群に囲まれた!こいつは大変だ!逃げた先は行き止まりだ!どうしようもねぇ!それでも内人くんは何かしてくれる…、そんな時創也くんがポツリと言った「きみといっしょなら、なんとかなるような気がするんだ」がみんなの気持ちを代弁してくれているようでした。同時に私は「というかそれ告白と見てよろしいですね?」とも心の中で呟きました。
トムソーヤーの冒険というタイトルの元ネタはありますけど、他の登場人物たちがそのまま似た役割を持っているかと言えばそうでもないのが考えると結構面白いです。アメリカ版は一人でトムソーヤだけど、日本版のこちらは二人合わせてトム&ソーヤ。トムソーヤの親友ポジションならハック役の子はやっぱり創也くんなんだろうけどもまったくキャラクターが違うしこいつは不在か…とは思いつつも、家もないし学校にも通ってないハックと超お金持ちで学校の秀才の創也くんは逆に見事に正反対過ぎてやっぱハックは君かいな?と邪推をしたり。トムソーヤのいたずらにほとほと手を焼いていつもガミガミうるさいポリーおばさんは、傍でいつも目を光らせているボディーガードの卓也がぴったりですね。トムの憧れの人のベッキー役は堀越美晴ちゃんかな?個人的にこの子がさりげなく己の勘のみでクイズの最終問題まで生き残ってたのは笑いました。最終問題じゃアイツ自滅するし、主人公コンビが助けなくても実は自力で助かってたという怖ろしいヒロインです。あとは敵役として栗井栄太とインジャン・ジョーがいますが、流石にこれは似てませんね。みんなところどころ似てたり似てなかったり。
あ、内人くんのおばあちゃんだけは誰も似ている人が思いつきませんね。というかトムソーヤーの冒険にあんな強そうなキャラ出てこないよ!内人くんにピンチをくぐり抜ける数々の知恵を授けた張本人ですが、おばあちゃんの知恵袋的な生活の豆知識もあれば、ナイフ片手に「刃物はね、使う者にとっては、とっても便利な道具になる。ただ、おろか者が持つと、その身をほろぼす」なんてどんな日常生活を送ったら出てくるんだと思うような修羅な助言を授けてくれたりします。出てくる作品違うんじゃないか…?
タイトルに違わない都会を舞台にした冒険の数々。山も川もなくても探検するところはいっぱいあるぜ!と毎日の生活にヒントをくれるお話でした。