かのこちゃんとマドレーヌ夫人

かのこちゃんとマドレーヌ夫人 (角川文庫)


ドーモ、コンニチハ。万城目さん4年ぶりです。本書が文庫化していたのを書店で見かけましたので手に取りました。
こちら「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」よりお送りします。
ページ数が200ページちょっとと若干薄めで、過去作品がだいぶ突拍子もない摩訶不思議なお話だったのに比べれば落ち着いていて、気軽に読めるようになっています。たぶん本気で濃いものは次作「偉大なる、しゅららぼん」でハジけているだろうから今作はこれでいいんです。万城目さんの少し違った面が見れるお話。
主人公は小学1年生の元気いっぱい かのこちゃんと、ふらりと現れて最近かのこちゃん家で飼われた猫のマドレーヌ夫人。かのこちゃんはかのこちゃんの学校での出来事を、マドレーヌ夫人はマドレーヌ夫人で猫仲間での集会の出来事など、日常の一端を切り取った情景を描写していくお話になっています。二人の生活は気ままに動き回り、たまに交差して思わぬ出会いが生まれたりなんかします。
かのこちゃんサイドでは小学1年生らしい、世の中のいろんなことがきらきらして見える好奇心いっぱいの毎日が広がっています。たまたま早く起きた日にそのまま学校に行ってみると、鼻に指を突っ込んで一人遊んでいるクラスメイトに遭遇して、ムムム何やつ!只者ではない!と新しい友達を見つけたり。知らない言葉をお父さんから教えてもらって、意味は分からなくても響きが気に入った言葉を見つけて喜んだり。トイレで変わったうんこが出て両親に得意げに話したり。まぁ、ばっちい!でもそんな事にも動じずに気軽に接している親たちを見ると、赤ん坊のころから世話していればそれが普通の対応で、そんなものなんだろうなと思います。というかお父さんはかのこちゃんの名前を付けるときに喋る鹿からアドバイスを貰ったそうですが、それって「鹿男あをによし」に出てくるアイツ(鹿)ではなかろうかと、他の作品を知っているとちょっと嬉しい演出がありました。それならお父さんは女子高の教師だった主人公かな?おいおい、じゃあ「鹿男あをによし」の主人公は、あのあと教え子の女子高生に手を出しちゃったってことかよ!問題あり過ぎぃ!と一瞬思いましたが、お母さんは鹿と喋れないそうなのでその線は無さそうでした。ドラマでは綾瀬はるかさん演じるヒロインの教師がいましたが、原作では性別が男なのでこっちも無しで、お母さんは普通の人みたい。お父さんも鹿が気紛れに話しかけてきただけの、その辺の人かもしれませんね。
マドレーヌ夫人サイドはちょっとファンタジックで、猫同士は思いっきりお喋りし合って空き地で井戸端会議てなもんです。マドレーヌ夫人が他の猫と変わっているところは、犬の言葉(猫曰く外国語)も喋れるところです。実際は旦那(犬。猫と犬の種族を超えた愛…//)とだけ言葉が通じるらしいのですが、話のネタが欲しいだけなんで猫たちもたいして問題にしません。だいぶ年を取った旦那と出会って、長らく放浪生活をしていたマドレーヌ夫人が初めて感じた安らぎ。よくわからない人間たちの習性。今日も優雅に夫人は塀の上をお散歩です。よく分からないうちに人間に化けちゃっててんやわんやしたりします。
生きていれば新しい出会いはあるし、当然別れる時もある。楽しかったことも悲しかったことも過ぎ去っていく月日を思い出して愛おしくなる、そんないつもの日々のお話です。