【堀川アサコ】幻想郵便局

幻想郵便局 (講談社文庫)



日常をちょっとファンタジックに演出するお話は好きですのでついつい目を留めてしまいましたが、ストレートに「幻想」だなんてタイトルを付けて真っ向勝負してくる心意気を購入。だ、大丈夫かなと少し不安だったり。たぶん特別な郵便物を扱うお話になるんでしょうけど、あらかじめ「ファンタジーするよー!」と宣言して実行するとなるとハードルが上がりそうな気がしてしまいます。
そんな感じて適当チョイスの本日はこちら「幻想郵便局」です。
就職浪人中の主人公さんに、学校の就職課からアルバイトの紹介があります。言われるままにほいさほいさと出向いた先は、死んだ人間と今生きている人間の荷物を届けるあの世の境界線の郵便局だった、みたいな感じのお話です。暖かな人々の交流か、はたまた悲しい別れの物語になるのか…。読む前にいろいろ想像が広がりますね。
そんな感じで読み始めてみましたが、まぁ概ね期待通りの心温まる人々の交流物語になっていました。ただお話の主役である主人公さんが見聞きしてることもしてないことも区別なく、とにかくいろんな説明が入ってくる新設設計でして、せっかくの幻想雰囲気がなんじゃこりゃー!みたいな部分がなんかありました。雰囲気重視のファンタジーには理屈っぽい説明文は相性が悪いです。なぜに新しい登場人物が出てくるとプロフィールみたいな説明文が挿入されるのだろうか。ほどほどにして後は描写せいな…。
あと展開をイマイチ乱暴に扱ってる節があるのが気になりますかね…。例えば疑惑の人物をこっそり追っかけて行くシーン。主人公さんがピンチの場面で危機感と恐怖を演出する展開にしたいのは分かるんですが、発見されてから「お仕置きだぜ…」って疑惑の人物がズボンを脱ぎ始めるまでがめっちゃ早くて、ヤバイのには変わりないけど本能に生きすぎだろ!っていう雑念が緊迫感をどうも邪魔してきます。ところどころ入るユーモアも、なーんか照れ隠しにエヘヘと入れてくるみたいで、あんまり合いませんなぁ。
なんだかんだ言っても気楽なお話なんで、こっちも気楽に読めましたね。