灼熱の小早川さん

灼熱の小早川さん (ガガガ文庫)

灼熱の小早川さんの由来は、高校入学直後の自己紹介で炎を纏った刀をぶら下げていたことに起因します。
そう、彼女は朝、始業前で大半の生徒がそろっている教室で、教卓の前に立って炎の剣を振りかぶったのだ! すげーぜ小早川さん!初っ端から学び舎をリアルバウトハイスクールへと化しやがったぜ!
ただしそれは主人公君の幻覚だったんですけどね。(マジで)
ええ幻覚です。このお話はとにかく現実路線の高校物語であり、炎を纏った刀は登場人物の感情の苛烈さを表す喩として登場し、それ以上の役割を決してすることはありませんでした。そう現実路線。しかもやる気がないクラスの現実路線。
どうもこんばんは。本日はこちら灼熱の小早川さんという、非常に重苦しい学校生活を見事に再現してくれやがったあまり楽しくないお話からお送りいたします。
私は学校生活の思い出を思い出すと、楽しかったこともいろいろありましたが、辛かったことも沢山あったと思います。その中の一つで悩ましいのは、度々発生するクラスの重苦しい空気を打開する方法。クラス委員を決めなきゃならないのに誰も手を上げず訪れる沈黙!文化祭で何かやりたいこと〜と聞かれて何も出てこず訪れる沈黙!そんな状況が苦しくなって雑談に走り余計にクラスの雰囲気を悪化させるやつ!くるぞー!くるぞー!このお話はそういう路線で来るぞー!
そんな最低なクラスに委員長として容赦なく正論でぶつかって孤立する小早川さんと、小早川さんの正論を鬱陶しく思うクラスメイトに頼まれて仕方なく副委員長を引き受けた主人公君との、正直勝てる気がしない泥沼のクラス闘争が描かれます。
つらーい!この時期はしょうがないところもあるけど、やっぱり見てて辛い無気力のクラスメイト!だらだらしたり学校の催し物でやる気なく振る舞う気持ちは良くわかるけど、そこは一生懸命頑張るべきだと十分自分は反省した分、作中の少年少女たちに言葉が届かないのがとってもつらーい!
そしてちょっと都合の良いところでファンタジーに逃げ込んだ分、お話としては若干やりきれない思いが私は残りました。例えばよ、小早川さんがそんなに美人じゃなかったらよ、小早川さんの気を惹きたいという下心がなかったらよ、やる気のないクラスで委員会の仕事はどうやって頑張ればいいんだろうか、とか。現実ってそうじゃないですか。違うのだよ、私の求めているファンタジーってのは、そこでクラスの人間を力ずくでねじ伏せてくれるナイスな打開策の登場なのだよ!
あ、最後はよくわからんかったです。なんか幸せそうでいいんじゃないかと思います。