魔王が家賃を払ってくれない

魔王が家賃を払ってくれない (ガガガ文庫)


魔王が家賃を払ってくれないって…、今じゃセリフみたいなタイトルも珍しくなくなりましたが、こんな自由な付け方が認められるライトノベルの雰囲気って個人的に好きですね。良いか悪いかではなくて、いろんな個性が出てこれる余地を保っているのも、ライトノベルが持っている価値なんですね。うん、良いか悪いかはおいといてね。
なんと、家賃というからには魔王が現代の賃貸物件に住んでいて、そんで魔王というからには部下もたくさんいそうなリッチな身分っぽいのに家賃も払えないような事になってるというのですか。いったいそうなるまでにどんな大変な事が起こったのだろう…と想像しようにもなかなか難しい、ギャップのある舞台設定でまずは読者(俺)の興味を惹きつける!ここまでは悪くない!だがその先が絶望的なのは今までライトノベルいっぱい読んだから知ってる!
さて結局はこちらもその例に漏れずひどい目に遭いましたが、このひどさは実は作者がわざと演出して拍車をかけているみたいで、もう遠慮することなく「アナタってなんてひどい人なの!」と言ってやればいいと思いました。こいつぁ質が悪いぞ!
お話の内容はとっても「今」という感じでして、昔の文豪の作品や一昔前の作品なんてものと比べればはっきりと感じ取れる2011年現在の小説なんだな、なんていうなんだか歴史を回顧させる想いを抱かせる深みがありました。もう伏字で隠す事なんかせずに堂々と「ニュー速」とか「虹裏」とか「2ちゃんねる」とか書き連ね、キャラを説明するときに「アヤナミ系」の一言で済ますという極限までスリム化した描写を見せつけ、少女のしましまぱんつは山ほど出てくる。話題が生もの過ぎて廃れるのも早そうだなこれ!それにギャグのネタがインターネットの内輪ネタを持ってきすぎて笑ってくれる人間も少なそうだなこれ! 知りません!私、junの隠れ里なんて知りません!
いろんなところからネタを拝借していささかスリリングなんですが、作者はそれをわかっててやりまくってる節があるので上手い事ネットで槍玉に挙げられれば計画通り(ニヤッ)となるのかもしれません。もう一回言うが、こいつぁ質が悪いぞ!
まあメインのお話はあるような無いようなというどうでもいい感じなのですが、憎たらしくも事前に敷いた伏線を後半で回収するという、まるでアメフトの名勝負を見るかのような見事なロングパスの応酬もあるにはあります。
ほんと自由な作品です。