ほたるの群れ2 第二話 糾

ほたるの群れ2 第二話 糾 (幻冬舎文庫)


近代風ファンタジーの傑作「童話物語」の作者が10数年後に向かった次なるフィールドは、殺し屋中学生が次々と襲いかかる中二ファンタジーだった!
どうもこんばんは。本日はこちら、正統派ファンタジーの名手が挑む、ある意味現代の主流ファンタジー「ほたるの群れ2 糾(あざわる)」よりお送りいたします。
ヤベーよ暗殺者中学生だなんて設定ヤベーよ、例えばそんな設定資料が書かれたノートを母ちゃんに見つかったりしたらヤベーよ目も当てられねーよと戦々恐々しながら読んだ「ほたるの群れ1」は予想外というか、この作者さんだから予想通りとも云うべき面白さでお母さんも安心の出来でございました。個人的に書き手の信頼度はそんじょそこらの作家さんとは比べ物になりません。
しかしながらタイトルに「1」とか数字が付いている通りお話の方は余裕で「次回に続く」状態で終わりまして、ち、ちくしょう!でも続きが出るのを楽しみにしてるんだからね!と待つこと約5ヵ月、意外と早く2巻と対面することが出来ました。ワーイワーイ。
お話はあらすじの通り主人公くんが学校で暗殺者組織に次々と襲われる内容なのですが、敵を蹴散らし正義を遂行する痛快ストーリーではなくて、息の詰まるような緊張感と殺し以外にも死の影がそこらに点在する物悲しさを纏った方向でお話は進んでいきます。というか重いよ!主人公くんもヒロインも家族で元気なの自分くらいしかいないんだもの!殺し屋の中学生達だって頭のイカレた悪人じゃなくて、あれこれ考える人間として描写されるんだもの! 彼らがなぜ組織で殺人なんてものをし始めたのか、し続けなければならないのか、ちゃんとお話で語るには難しい問題が山のようにありますが、この作者さんなら見事に全てを描き切ってくれることでしょう。そう思います。
あくまで暗殺組織の衝突に巻き込まれる形でお話にかかわってくる主人公くんなのですがどうしても次第に人の道を外れ始めざるを得ず、1巻2巻と進むにつれて多くの人の死と関わり後戻りが出来なくなりつつあるのは仕方のないことでしょうね。道を踏み外す後ろめたさと未練と怖さがありながら、どうすることも出来ない哀しさをメインにした情景描写が光ります。
たまたま主人公くんが暗殺者に殺されないで生き延びられたのがこの1巻と2巻のお話で、なんとかしないとそろそろサクっと殺られるんじゃねーかという息苦しさはそのままで物語は3巻へと続くことになりました。邪魔者は力尽くで排除しちゃえばいいんじゃないかな…という安易な考えにどうしても行きがちな状況ですが、主人公くんの葛藤にまだまだ目が離せそうにないので私はまた3巻が出るのをじっと待つしかないようです(満面の笑みで)。
ところで話は変わりますが、小松喜多見さんのヒロイン力とかテクニックが半端ないですね…。彼女がどうやら本性を現してきたようです。ターゲットは暗殺者の阿坂くん。
小松さんは度々無理やり阿坂くんに突っかかって胸をもまれたり口を塞がれて倉庫に連れ込まりたりと、このお話のお色気担当みたいなこともしているんですが、阿坂くん自体は結構紳士なので必要がなければそんなことはしないっぽいんですよね。人気のないところまで阿坂くんが気付かぬ内に後ろを付けて行って、案の定現場の下見を見られた阿坂くんに小松さん捕まり涙でぐしょぐしょ…という状況を見たときこの娘、毎回わざと阿坂くんが襲わざるを得ない状況を作ってないかと少しだけ思いました。なんか最後にまた阿坂くんが緊急出動しなければならない状況になってましたが、まあ確かに早く助けに来てー!とは思うんですが、現場に到着したら阿坂くんなにやらされるんだろうと変な考えがなぜか一緒に付いてきます。
小松喜多見…侮り難し…。