【ジーン・アウル】ケーブ・ベアの一族 上(2日目)

ケーブ・ベアの一族 (上) エイラ 地上の旅人(1)



ケーブ・ベアの一族の続きです。より深くお話の中へと入っていきます。
3万5千年前のネアンデルタール人が現代人とは全く異質な生き物であると思ってはいませんが、火を使い始め石を砕いていた頃の人類がどれほど文明的なのだろうかと訝る気持ちはどうしても湧いてしまいます。民主主義や女性の社会進出なんて言葉の遥か昔に生まれたこの主人公の女の子が、いったいどのように生きていくのか実に気になるところです。そもそもこの原人たちってメシ、フロ、寝る以外の事を考えるのだろうかと思ったりも。
しかしそんな私の杞憂とは裏腹に、そこには一族がまとまってコミュニティーを形成し家族や隣人を敬う心を持ち、未発達の発声と身振りを加えた独自の言葉を使い規律を重んじる人間たちがいました。一族の長は仲間の利益を第一に考える思慮深さを持っているだけでなく、太古の霊や大地の精霊たちを崇拝する独特の宗教観も持ち合わせた聡明な人物として描かれ、一見狩りが出来なくてグループの邪魔者になりそうな老人はまじない師として恐れ敬われる存在だったりします。これは失礼しました。メシ、フロ、寝るしか言わないのは昭和のお父さんの方でしたね。
そんなネアンデルタール人の彼らに拾われたはいいクロマニヨン人のエイラですが、彼らの宗教観にとって異質な存在である戸惑いとほっといたら死んでしまうという人情の間で、生き残れるか追い出されるかの微妙な日々を過ごすことになりました。彼らは決して野蛮な種族ではなくて、自然の気紛れさと脅威を何代にも渡って知っているからこそ規律を重んじて精霊を崇拝するような事をしているんですよね。虚空に向かって祈り願う姿はぱっと見で非科学的かもしれませんが、実のところは自分との対話の手段であり、より良い未来を選ぶための方法だという事が、一連の内容を読めばすぐに分かりました。このネアンデルタール人は立派な人類として描かれています。そしてエイラはその中でもさらに現代人寄りの考えを持つ人類で、そのせいで起こる対立と葛藤がこのお話を形成していきました。なるほど、まったく予想が付かなかった原始人のお話はそうやって進んでいくのね。面白くなってきたじゃないの。
外見も体の作りも違うけど、女の子らしからぬ元気さと賢さを持ったエイラは上手い事仲間の一員になれたようでほっと一安心。上巻は主に幼いエイラが、一族の習慣やしきたりに戸惑いながら一生懸命あれこれ覚えていく姿が描かれていきます。この一族は完全に男社会で、男は狩り、女は育児と料理ときっぱり分けられ、女は男に絶対服従しなければならないようです。そんな世界は珍しくありませんが、このエイラはどうやらその枠に収まらないようでちょっとずつトラブルを起こしたりと保護者の頭を悩ませてばかり。でもその姿は面白くもあり、自分の意志を持つ力強さもあり、生まれてくるのが3万5千年ほど早かったと思う事もありで大変ながらも楽しい道中が繰り広げられていました。
さてそろそろ上巻も終わりに近づいてきましたねという所ですが…
(;゚Д゚) う、うわー!エイラやばいことになってるー!
規律を守るか、子供の命を救うかで考える事無く子供を助けたエイラは、案の定ネアンデルタール人式裁判にかけられることに!
彼らだってエイラのしたことに感謝はしているけど、禁忌を破った精霊の怒りも恐ろしい!助けたい人間、エイラが嫌いでいい機会だと企む人間、どうすべきか判断を下さねばならない人間が入り混じって、気になる裁判の行方は下巻へ続く!ちくしょう気になる終わり方しやがって!
そんなところでひとまず上巻は終わりです。続きはまた来週に持ち越しします。(仕事が全部悪いんじゃ…)
でも気になるから睡眠時間を削ってちょっとだけ下巻も覗き見る。ちょっとだけ…ちょっとだけ…(自分に言い聞かせながら)