ストレイヤーズ・クロニクル ACT-1

ストレイヤーズ・クロニクル ACT-1 (集英社文庫)



作者の本多孝好さんはどことなくミステリアスで時にしんみりするようなお話をよく書いてくれる印象がありますね。
んだもんで超能力を持った若者たちの闘争を描くという、まるでライトノベルのような設定を聞いたときは何とも意外に感じたものです。従来のイメージからさらに発展し、新しい領域への挑戦でございます。
本日はコチラ「ストレイヤーズ・クロニクル ACT-1」です。今年の6月に実写映画化もされるようで、文庫本の帯には広告が踊り、WEBには映画の特設ページも作られるなどなかなか賑やかです。
お話は四人の若者たち、上は20代前半から下は中学生までの特徴あるメンバーが、己の明日を生き抜くために大物政治家である渡瀬の密命を受けて裏稼業に勤しむという、ダークなファンタジーとなっています。この四人の若者は特別な実験を受け、聴力や運動能力や記憶力などが常人とは比べ物にならないくらいに発達し、超能力と言っても良い特別な能力を持っています。ひとたび耳をすませば物陰から忍び寄る足音から人数だけでなく体格や武器の有無をたちまち探り出し、自慢の脚力を発揮すれば常人には瞬間移動したようにしか見えず、一瞬でも目に入ればぱらぱらと捲ったアドレス帳の全てを暗記する事も容易く行ってしまう、まさに超人の集団です。政治家の渡瀬は彼らを力尽くで従わせ、表沙汰に出来ない事件を強引に解決するためにその超能力を使うのでした。
そんな折、アゲハと呼ばれている謎の集団が、犯罪組織のメンバーを次々と斬殺するというニュースが世間を賑わすようになります。どうやらアゲハもまた、主人公四人と同じく特殊な力を持った人間であるようなのです。彼らの正体を探るため、やがて主人公四人は超能力者同士の壮絶な戦いに巻き込まれるのでした…。と言う感じです。
超能力者同士の対決と言う、アクション満載の熱くなる設定がまず目を惹きますね。そして超人的な力を持つ主人公四人は異常者として描写されず、どこにでもいるような、そして誰しもが悩むような問題に苦しむ、一人の人間として丁寧に描かれています。両親がいないので四人は家族同然に暮らし、弟や妹のために頑張らなきゃ…と危ない仕事でも必死に頑張る姿がなんとも涙を誘います。家族愛じゃぁ〜
ただなんと言いますか、超能力の設定や謎の組織の存在や見せ方がシンプルと言うか、…地味?なんですよね…。続編前提だからか謎のままの設定も沢山ありますし、イマイチのめり込む元気が湧きませぬ。瞬間移動しながら戦っている二人の姿だけ見せられても、どっちが優勢なんだかどっちの能力がどれだけ凄いんだかよう分からん!
新しい本多孝好さんかもしれないけれど、あんまり好きじゃないなぁ…。これ映画化するのかぁ…。