【上橋菜穂子】精霊の守り人

精霊の守り人 (新潮文庫)



好きな本 ぼしゅう 10月のコメントより。その2。
貴志祐介著の「新世界より」と、上橋菜穂子著の「精霊の守り人」という本が面白いです。
二冊ともファンタジーで、「精霊の守り人」の方はシリーズものになっています。巻を重ねるごとにお話の規模が大きくなって壮大になるので、迫力があって読み応えがあります。


くるくるさん、おすすめありがとうございます。その2。
先週に「新世界より」を読みましたので、今度は「精霊の守り人」を読みます。そのタイトル懐かしい…すっかり忘れてた…。
作者の上橋菜穂子さんの「狐笛のかなた」という作品を昔読んだことがありまして、面白かったので他の作品もないかと作者さんの著作を調べてみたことがあったんです。その時に精霊の守り人シリーズを見かけたんですがまだ文庫化されたものが2,3冊しかない頃で、「単行本で出版されているものが全て文庫化されるまでは相当時間がかかるぞこりゃあ」と、そのうちいつか読もうと胸の内にそっとしまった名前だったんですよね。大事にしまい過ぎて、今まで忘れてました。いっけねー。現在調べ直してみたら、本編のシリーズはすっかり小さな文庫本と化しているようでして実にナイスタイミング。すごい個人的な事情でしたが、なんかもう、くるくるさんいろいろありがとうございます。
そんなわけでこちらの守り人シリーズ1作目「精霊の守り人」よりお送りします。
テレビアニメ化されて話題になったのは2007年といささか昔で、本の出版自体も17年前とだいぶ歴史のあるシリーズで読者も多いのでしょうが、今までタイトルすらすっかり忘れてたくらいピュアな私には関係ありません。出会った今こそが私にとっての守り人元年なのです。ナウのだよなう。今、私の中で精霊の守り人が話題だとニュースになっています。
お話はこの物語の主人公、槍使いの女用心棒 バルサさんが、川に落ちて溺れていた少年を助ける場面から始まります。実はこの助けた少年は後々王族の御子息であることが判り、やがてバルサは国の陰謀に巻き込まれていくことになる…みたいな感じでお話を進めても良いとは思うのですが、しゃらくせぇ!とばかりにそんなまどろっこしいことはしません。少年は川に落っこちる前から皇子バレしていて、助けた次の場面ではさっそく陰謀真っ只中のスピーディーな展開。めまぐるしく変わる状況に読んでいる側は飽きを感じる暇がありません。
助けた皇子様には憑き物のようなようわからんモノが憑りついているらしくて、不吉な兆しだと見なされたせいで暗殺される真っ最中だったようなのです。皇子様のお母様に依頼を受け、報奨金と無事に部屋から出ていく権利(脅迫じゃねぇか!)と引き換えに皇子様の逃亡をバルサさんが手助けすることになりました。さぁ物語の本格的な始まりですね。
国相手に逃亡劇だなんてどうすりゃ終わりが来るんだろう…と想像も付かないゴールに向けて走り始めた皇子様のチャグムくんと用心棒のバルサさん。私はてっきり、この本では大きなお話の流れの一部が垣間見えて終わるんだろうな、続きは後のシリーズになるかなと思っていたんですが、チャグムくんの逃亡劇は今回で解決してしまいます。一巻完結のスピーディーな展開とスッキリする終わり方、それに手に汗握る道中は大いに喜ばしいことですが、こんなにちゃんと終わるものだとは思ってもみませんでした。イイヨ イイヨー。
チャグムくんは皇子様という役割のため、庶民とはかけ離れた感覚と常識の無さを持った御坊ちゃんキャラとしてハンデを負わされています。でもチャグムくんが素直な良い子過ぎて正直何の問題もありません。突然住まいを追われ、命を狙われるというハートフル過ぎる祖国の仕打ちにも黙って耐える強い漢の子。バルサさんが道中、チャグムくんを大事に扱い真摯に接してくれたのも、チャグムくんの人柄が大いに関係あると思われます。もしチャグムくんがクソガキだったらこうはいくまい。バルサさんは結構人格者みたいな描写を保っていましたが、本当のクソガキを相手にしたとき、敵に向けるバルサさん自慢の槍がクソガキを狙わないかという事に関しては未知数です。バルサさんの化けの皮が剥がれるかどうかは、今後の楽しみに取っておくことにします。
バルサさんは今回、ばっさばっさと追っ手を蹴散らし、傷だらけになることも厭わない勇猛な漢女(30歳)の姿を披露してくれました。確かな槍の腕前と、ちらりと思い出話に出てきた養父との思い出、それに8人の追っ手を退けた養父との長い逃亡生活の話など、想像を掻き立てられるエピソードを匂わせつつ、まだ多くは内緒のままです。後のシリーズで語られるのかもしれませんが、明るい話題じゃなさそうなので覚悟しときましょう。ナムナム。
ところで話は変わりますが、バルサさん(30)とチャグムくん(12)のこの微妙な年齢差がなんというか、なんともいえんというか、グフフ。バルサさんには馴染みのタンダさんがいるのですが、チャグムくんが積極的だったら歴史は変わったのかな、と。むしろその時歴史は動いたのかなと。だってタンダさん、バルサさんの事をおてんばバァさん呼ばわりするデリカシーの無さですよ。まっ!30歳の女性をおばさん呼ばわりだなんてモテなくて当然だわ!30だなんてまだまだ…まだまだ…(俺はいったい何をムキになって否定しているのだろう…)、近頃は30なんてまだ大人の入り口みたいなイメージだし…(守り人シリーズが文庫化するまでの数年間で俺も年を取った)、芸能人なんかその年代でも綺麗な人は沢山いるし…(守り人の名前を知ったとき読んでいたら同じ感想を持つだろうか)、むしろ30越えてから大人の女性って感じの魅力が増すと…(昔の自分が一生懸命感じ取ってきた世界は、一瞬で否定できるほど軽いものだったのか)、…(そう、子供の価値観は大人から見れば大したものではないかもしれない)、…(だが拙い価値観でも信じて生きてきたあの時があるから今の自分がいるのだ)、…(それはそうとして、バルサさん(30)いいよね。)
くるくるさんのおすすめは「精霊の守り人」でしたので、今回で紹介頂いた本の感想は終了です。ただ後の守り人シリーズに関しては、個人的な趣味でのんびり追いかけていくことになります。た、たまたま読もうと思ってた本がおすすめとかぶってただけなんだからね!シリーズ全部追いかけるとは限らないんだからね!(※ただし言った本人も信じてません)
以上!