華竜の宮 上(1日目)

華竜の宮(上) (ハヤカワ文庫JA)


ちょう分厚いSFの本。気合入れて読むでぇー。
作者さんを知ったのは昔テキトーに手に取った本がエライ心にヒットしたからからなんですが、過去作品はそりゃまぁクラクラするくらい理屈っぽい科学技術描写でいっぱいなんです。そんでもって忘れないファンタジー溢れる世界観。そのバランスがとても良うござんすよ。そんな作者さんがドドーンと上巻400ページ、下巻400ページの大ボリュームでお出ましと来たらワクワクと一緒に物量パワーで既に気持ちが押され気味ですよ。読まなくても伝わるこの大物感。2011年の日本SF大賞受賞という経歴も、予感を確信へと後押しです。
本日よりコチラ「華竜の宮」からお送りしていきます。
お話の始まりはだいたい現代と同じ時代設定。現実の世界でもよく話題になる地球温暖化について、地殻変動の観点からこのお話は"もしも"の未来について展開していくことになります。なんとなくイメージ的には地球温暖化は環境破壊の影響だとか大気中のCO2のせいだとかがよく原因にされそうな感じですが、このお話ではホットプルームという馴染みの薄い言葉から地球温暖化へアプローチしています。なんか地球内部のマグマの対流がのんびりと地表付近まで上がってきて、広範囲で温かくなった影響がアレやコレやして温暖化が進むんだと(無知な一般人の感想)。いや、作中ではホットプルームのメカニズムとそれに伴う地殻変動について細かく描写がありますんで、なかなか読み応えのある部分ですのよ。そして温暖化でお決まりの海面上昇が発生し、全世界の海抜が緩やかに250メートル以上になった数百年後の未来が本格的なお話の舞台となる様子です。
さてお話は数百年後から再スタートするのですが、その間に人類は何もせずにじっとしていたわけではありません。拡大する海面から逃れるように内陸へ大勢の人間が避難し、当然のように土地を巡って戦争が勃発。同時に変化する環境に対応するために積極的に遺伝子操作を行い、広大な海へと進出する人類もいます。あとは人口知性体で大量殺戮が行われたり、遺伝子操作で怪物化した生物兵器が跋扈したり、まぁいろいろ混沌とした時代を過ごしてきたようです。体長30メートルにもなる海獣を人間が操り、野生化した新種の猛獣たちが人間たちに牙を剥く!なんかいつの間にか地球が凄いことになってる!
そんなわけでお話の中の地球は海の面積が広大になり、夏の雰囲気にピッタリな海洋ロマンあふれる物語が展開されます。常に海風の雰囲気がしていて、暑い陽気の中で読んでいて気分がイイです。