恋文の技術

([も]3-1)恋文の技術 (ポプラ文庫)


なにこれハウツー本?エッセイ? いいえ、ちゃんとした小説でした。
しばし住みなれた土地を離れることになった寂しがりやの大学院生が、寂しくなんかないやいと嘯きながら知人たちに送ったお手紙のお話。その送った何十通のお手紙をそのまま綴じたような構成でこの作品は出来ております。友人知人、先輩に家庭教師した小学生…、いろんな人たちと文通をするけれど、本当に想いを送りたいヒトにはずっと書けずにいるままなのがお話の肝ですね。328ページの恋文です。
ゲェー!登美彦さん甘いぜー甘々だぜー!なんて印象をこれだけだと受けるかもしれませんが、主人公の腐れ大学院生は想いに真っすぐ立ち向かう事などしないヘタレの極み野郎なのでそう思った通りにはいきません。同じ恋路に悩む文通相手をからかったり諭したりしながら、最後に自らの想いを綴った手紙を書きあげるドキュメンタリー。同級生にはざっくばらんに、怖い先輩には礼儀正しく姑息に、妹にはエラソーに自分を飾りたててお手紙を書いていまして、やり取りを繰り返すうちに主人公さんの実態がバレて行くちょっとした推理的な楽しみもありました。
あと、何故か文通相手の一人が森見登美彦氏。主人公さんとの文通のやり取りを幾分パクって、「夜は短し歩けよ乙女」のネタにしていました。執筆活動そっちのけで手紙を寄越してくる登美彦氏がなんとも愛らしいです。
そしてなんともおっぱいおっぱい。遂に本性を現したなこのおっぱい野郎!と方々から攻撃を受けること必死のおっぱい議論がお話の中ほどで炸裂してます。いったい何十回おっぱいの文字が出てきた事か。
だが待って欲しい。世の中の女性たちから侮蔑の視線を投げつけられかねないが、私は森見登美彦氏のおっぱい観にちょっと待って下さいと言いたくなってしまった。本当におっぱいとしか叫んでないじゃないですか。色形サイズ重量ツヤ匂い…なんでもいいんです、森見登美彦氏が理想とするおっぱいとは何かが一切伝わって来ないんですよ先生!いや、確かな実感を伴わなければおっぱいを捉えられない私はまだまだ未熟者だと言う事なのですか!おお、おっぱい!おっぱいとはいったいなんなのでしょう!
…ハッ!?
ま、まあ面白い本でしたよ。とても。