【ヨースタイン ゴルデル】ソフィーの世界 ―哲学者からの不思議な手紙

新装版 ソフィーの世界 (上) 哲学者からの不思議な手紙 ( ) 新装版 ソフィーの世界 (下) 哲学者からの不思議な手紙 ( )


少し多めの連休があったから、いつもよりちょびっと不思議な世界へレッツゴー。向かう先は不思議な不思議な、哲学の世界です。
本日のコチラ、「ソフィーの世界 ―哲学者からの不思議な手紙」は小説のような哲学の本のような、哲学の本のような童話の本のような、お話を楽しみつつ哲学の歴史にも触れられる世界で超売れたミステリーちっくな本です。
お話は主人公の少女、ソフィーがいつものように郵便受けを覗くと唐突に、本当に唐突なんですが「あなたはだれ?」とだけ書かれた手紙が混ざっているのを見つける場面から始まります。手紙が入っていた封筒にはソフィー・アムンセン様へとだけ書いてありました。この怪しげな手紙がお話と、そして哲学への最初の一歩です。なんだろうこれ?と疑問に思うことが大事なんですよね。もしつまらないイタズラねと捨ててしまったら、そこでこのお話も、哲学という世界も終わってしまうのです。世の中の当たり前と思っていることに何なんだろうか?と問いかけるのが大事なんです。ちょっと難しいのが、どんな解決を見つけたかとか、何を考えたかということよりも、どのように考えたかということの方が重要だそうな。うーむ、例えば仕事じゃメールの返信一つでも答えというものを求めていつもヒーコラ言ってる身としましては、答えが重要じゃないといわれても戸惑っちゃいますね。普通は真っ先に答えを探すんじゃないでしょうか。ありもしない答えを探しているから苦しんでいるのですといってみると、アラなんだか哲学っぽくなるじゃない?そんな気しない?
ソフィーは興味を持ったか、あるいは単に暇だったかでこの不明瞭な手紙の問いを捨てずに手元に残します。やがて程なくして二通目、三通目と手紙が届き、内容の文章も次第に増え、いつしか全ての人間に関係ある問題を扱う世界、哲学の世界へとソフィーを少しずつ導いていきます。いろいろなたとえ話を持ち出し、時には他の学問に比べて人気がないんだよなぁ!とユーモアを混ぜながらずっとずっと昔、紀元前の時代から続く人間の何故という問いかけの歴史が、ドラマティックに開始されます。キリストさんが現れて始まる西暦には、まだ600年も待たなければならないほどの昔です。ひえー、ずいぶん遠い所へ来てしまったなぁ。
ソフィーは日々の生活を送りながら、謎の人物からちょくちょく送られてくる哲学の世界が書かれた手紙を読み、同時に手紙の人物とその目的について探る事も始めます。手紙が届く瞬間まで郵便受けで待ち伏せたり、怪しい人影を見つけては後をついていったり…。史実の哲学のお話とは別に、この謎の人物と謎の手紙はやがて姿を現し、ソフィーは驚くべき自分の世界の在り様を目にすることになるのです。そんな感じのお話。
この本のことを哲学の入門書と評する意見を見かけたことがありますが、なるほど確かに手さぐりで哲学の世界に踏み入るにはいい指標になりそうねと思いました。ソクラテスプラトンデカルトetc…紀元前から現代までの、聞いたことのある名前や初めて聞くような名前の哲学者たちがたくさん紹介され、彼らの発した問いかけが簡潔に親しみやすく紹介されているのです。ニュートンダーウィンなんかの一見違う分野で活躍したと思ってた人物が紹介されるのも意外で面白かったですね。偉大な発見はその分野に関わらず、人々の思想に多きな影響を与えるからなんですね。また簡単に書かれてるとはいえこのソフィーの世界だけを読んで哲学を全て理解することは、そりゃぁまあ無理なことは分かりますわ。紹介されている哲学者各々の数だけこのソフィーの世界より分厚い著書や関連書籍があるに違いないと考えれば、目の前に想像の哲学書のタワーが一丁上がりってなもんよ。でもソフィーの世界を読んで面白かった逸話のある人物を見つけ出すことは難しくありません。そして興味があるならその人物についての本を読んでみると。哲学への興味を持たせて更なる哲学の奥深い世界へ誘う、そういうガイド的な本としてもぴったりですね。
結構分量がありますが、読めばこの分野をすっかりおさらい出来た気分になれる面白い本。しかしWEBを軽く見てみると、このソフィーの世界で読書感想文の宿題でも出されたかのような書き込みがあるのをちらちらと見かけます。この本で感想文の宿題を出すとか、もしあったらエゲツネェ学校だでぇ(笑)。そういう事をすると、せっかくの面白い本もつまらなくなっちゃいますよ!先生は生徒の下駄箱に一通、「あなたはだれ?」とかだけ書かれた手紙をこっそり入れとくくらいで全然良いんじゃないでしょうか。この本のアルベルト・クノックスさんがそうしたようにですね。