【久保寺健彦】ブラック・ジャック・キッド

ブラック・ジャック・キッド (新潮文庫)


僕の名前は織田和也!天才外科医ブラック・ジャックに憧れる小学四年生ダー!
あの特徴的な髪形や黒尽くめの服装を真似て元気に学校に通っちゃうような、ちょっぴりお痛な主人公くんが過ごした少年時代を綴るお話です。これ、小学校生活の雰囲気の作り方が半端無いです。自分が当時小学生だった時の記憶だけじゃなくて、その時の気持ちや感覚までもがまざまざと思い出され、もの凄い勢いでお話の世界に引き込まれました。昼休み真剣になってケイドロをやった気持ちが、十数年の時をぶち抜いて俺に戻ってきたぁ!ああ、今なら本気で小学生と戦える。
さて、本日のこちらの作品は日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しておりますが、私の記憶をガンガン刺激してくるあたり中身はリアル寄りであるという感じがします。
作中では漫画のブラック・ジャックが連載中のようですから、実際に私が過ごした少年時代よりも前の時代設定になっています。ですがそのような年代の差など一切感じさせる事はなく、お話を読んでいる時私は小学生になり、確かに主人公くんと同じその時を過ごしていましたね。主人公くんの生活は若干ハード気味ですが、彼の学校生活に私も一緒に登校し真剣になってクラスに参加していたように感じます。記憶の追体験のようでもあり、新たな小学校生活を体験しているとも言えます。ですのでその分、クラスの勝気で美人な女の子とお医者さんごっこ(もちろんエロい意味の)をする事になった時は思わず
(; ゚Д゚)  !?
となってしまいました。私には実際そんな記憶は全然ないんですが、お話に入り込んでいるあまりそのエピソードをあった事として本当の記憶としてしまおうか考えてる自分がいました。ヤバいなこれは、いろいろな意味でいろいろヤバい。ああ諸君、煩悩まみれの諸君よ、もし私の言葉で邪な期待をしてしまったら、迷わず書店へとダッシュせよ。
一応ファンタジーノベル大賞作品ですからファンタジーな出来事も起こるんですが、あんまり作品の雰囲気と合わず変な感じがちょっとしました。あとお話全体もなんだかいろいろ起こるんですけど、どれもしっくりした繋がりとか終わりとかがあんまりで、あれーそこでそれ終了?みたいなやりきれないものも少しありました。
でも何度も言いますが作品の雰囲気は私はとても好きなんですよね。作品もですが、それ以上に作者さんに魅かれましたよ。もう少し作品を追いかけてみましょうか。