羽月莉音の帝国10

羽月莉音の帝国 10 (ガガガ文庫)


羽月莉音の帝国の最終巻。感動のフィナーレの10巻です。おめでとぅー。
最後の最後までハラハラドキドキ笑わせてもらいましたが、改めてこの作品は今まで私が出会ったライトノベル作品の中でも非常にユニークな作品であると思いました。そして現実なのかファンタジーなのか、本気なのかギャグなのか判断に困る非常に壮大なお話は、私が愛してやまない全力で阿呆をやらかすお話でとても楽しませてもらいました。
さーて、ではこの「羽月莉音の帝国」シリーズとはいったいどんな話であったかと乱暴にまとめちゃえば、普通の高校生が核ミサイルを買うまでのお話ですねこれは。
もともとのお話の起こりは、主人公くんたちが高校入学を機に始めた部活動で「日本を転覆しよう!」と目標を掲げた革命部を設立したところから始まりました。取り敢えず高校生にはあるまじき発言の阿呆加減は置いときまして、では日本を転覆するにはどうすればいいのかと考えたところ、何をするにしてもまずは金が必要だろうという事になりました。じゃあもし金を集めたらそれをどう使う?となったところで、核ミサイルを配備して宣戦布告する!とそのうち大まかな方向性が決まりました。
あとは1巻から9巻までひたすら金を稼ぐ!とにかく稼ぐ!ひたすら稼ぐ!あらゆる手を使って稼ぎまくる!
(; ゚Д゚)  ば、馬鹿がでたぞー!!
ええ、もう途轍もない奴らです。初めの頃は日本転覆!世界革命!なんていう阿呆な目標に元気に突進していく姿を見て笑えましたが、次第に洒落にならないほど資金を集めて本当にミサイルを手に入れそうになると、あまりのクレイジー具合に笑うしかなくなって笑いました。正直もし私が有り余るほどのお金を持っていたからと言って、核ミサイル一基頼むね!とホームセンター的なノリで気軽に買えるような代物だとは到底思っていません。というか誰に頼んだら買えるんじゃい!と完全にお手上げ状態なので、まさにお話は先が読めない展開の連続です。9巻までずっとお話に引き込まれたのは、どうやったら買えるんじゃい!誰に頼んだら買えるんじゃい!という疑問にひたすらネタを詰め込みまくってくれたおかげだと思いますね。
そしてたっぷり9巻分の助走の後、最終巻の10巻で一気に世界を相手に戦闘を仕掛けます。いつの間にか日本から世界に目標が変わっているけど気にしない!10巻にして最初で最後の革命活動の始まりでございます。
主人公くんたちの革命は成功するのか?そもそも高校生で革命活動していったい何がしたいのか?そんなに今の日本じゃ不満なの? お話開始当初からあった疑問は10巻で決着が着きますが、どうなるか書くような無粋な真似はするまいて。
ただこれは最初は高校の部活動として始まったんですよね。運動系の部活動なら国体で戦ったり世界戦に出場したりするのが最終地点だと思いますが、もし革命をする部活動に県大会とか全国大会があったなら最終地点はやっぱり世界に出ることなんだろうか、なら世界大戦は革命部の部活動の範囲なんだなぁ、と何か妙な納得が出来て笑えました。すげぇよ世界大会出場だぜ!と同じノリで、すげぇよ世界大戦開始だぜ!とかなんとか言っちゃえる感じで陰惨な雰囲気とかは全然ありません。HaHaHa!クレイジー
さらに珍しいことに、主人公くん側は世界に対する敵として、ラスボスとしてお話に君臨していました。どう見ても悪役。どう見ても勇者や英雄に倒される魔王役。世界征服を企む悪の組織が、まさか主人公とは! 始めはたいして活躍の場もなかった春日恒太ですが、ライトノベル史に残るような圧倒的存在感とカリスマを持った大魔王へと変貌を遂げました。もう魔王に飢えている世界中の勇者たちが、目の色を変えて挑みかかってくるような最高級の大魔王です。な、何が起こってるだー!!?
たった一人の高校生の企みに四人が集まり、革命への道を迷うことなく突き進める度胸と知識を持ち、決して相手を裏切らない揺るぎない信頼関係を備えるファンタジーを授けられてどこまで行けるか楽しみだった五人の部活動は、遥か遠くの途轍もなく巨大な目標まで物凄い勢いでぶっ飛んで行ってしまいました。想像力の彼方へ読者を連れて行ってくれる、とても楽しいシリーズでございました。
いやー、物語を読むことって本当に楽しいですね。