羽月莉音の帝国8

羽月莉音の帝国 8 (ガガガ文庫)


高校生が日本転覆を目指した部活動をするお話の8冊目。もはや一見さんがふと興味を持ったとしてもちょっと躊躇しちゃうくらいの巻数になっちゃいましたが、この8巻でお話的にはようやく辿り着く所に着いた感じになりました。
日本転覆、革命に建国、お話の方向性として市場経済のルールを使うという現実方面からのアプローチをしたせいで「ぶっちゃけ無理ゲー」な気配が初っ端から漂っていたそれらの目標ですが、とうとう夢が現実になる一歩手前まで部費を稼ぎまくってしまいました。高校の部費のくせにどこの国の国家予算よりも多くねーか…。
さて、このお話の面白い所に、最初の目的をぶれる事なくずっと追いかけ続けてきたというものがあります。正直、小説なんだから日本転覆なんてものは簡単に出来てしまうと思います。例えば「20XX年、日本の近代経済は終わった。第3部完!」とでも書けば、そりゃもう私だって日本転覆を描写できますよ。面白くもなんともないだけで。ですので1巻で登場人物が「革命する!」と言いだした時点では、こっちだってフーンとしか思わなかったですし、「そのためにはお金を稼ぐぞ!」と話が進んでくると へーそれでどうすんの となってきて、借金を背負ってパソコンをそろえた辺りでようやくなんだか面白そうな事を始めたな、と感じるようになってきたんですもの。
そんでお金を稼ぐためにゴミを拾って売り払い、缶ジュースを仕入れて売り払い、身内の写真を売り払い、会社を興して服を売り払い…を推し進める事実に8巻分。最初の目標「革命」と「お金稼ぎ」の間にとにかくネタを詰め込みまくった高密度の道中で、その勢いも半端じゃなかった。手を抜いた描写のつまらなさは、私が先ほど書いた日本転覆の一文を見ればよーくわかると思いますが、私が一文で表わした内容を8冊かけてもまだ語りきらない作者さんの溢れ出るような話のネタは感服する所がありますね。とってもお喋り上手です。
次なるステージ、本題の「革命」ですが、革命をしてなにすんの?と言うところを語る段階にとうとう来てしまったかもしれません。そんな予感がした8巻目。革命部の面々からますます目が離せない、というかようやく本番が見えてきたこのお話は変わらないワクワクさんぐあいですね。
あと、最初はお荷物気味だった春日恒太くんが世界の超VIPになり絶頂を極めているのがとっても感慨深いです。泣くなお父さん!息子さんは出来る子なんですよ!
時代は 沙織 → 巳継 → 恒太 の順で世間の注目を集めてきましたが、とうとう革命部の部長の莉音が表舞台に出てくる時が来るんでしょうか…。なんかその時は世界の崩壊が一緒に来る気がするのは何故だ…。