立ち読み客がいるライトノベルコーナーはいいライトノベルコーナーだ

最近一時的に住まいを移す事になったんですよ。200キロほど離れたところに。
そんで現地に着いてまずやらなければならないことが近くの書店を見つけること。これは個人の趣味の問題だが俺にとっては死活問題。一人静かに本を読む時間が取れるなら、それは素晴らしい心のゆとりとなる。新天地でひとりぼっちでもよろしくやれるってわけですよ。読むものはなるべく堅苦しくないものを選びたい。時間を無駄にできるような内容ならさらにいい。無駄にできるような時間があるという事は素晴らしいことだ。そんな俺の要望に応えてくれるのがライトノベル。たまに面白いものが混じっているというおまけも付いている。



そこで近くの書店の場所をいろいろ見て回ったんですよ。



まず向かったのはとにかくデカい本屋。10階建ての百貨店の1フロアを丸々占めている広々とした本屋。店内というよりどこの図書館だよと思うような内装をしていて、休憩用の椅子に座って堂々と小説を読んでいる奴らが売り場だという事を余計に感じさせなくさせてやがる。まあそんな客のモラルはともかく、ここならどんなライトノベルも置いてあるだろうと俺は思ったね。でもダメ。全然ダメ。何がダメって、ライトノベルコーナーに平積みしている場所がない。全部綺麗に棚に収まってる。ライトノベルは鮮度が命なのに客に新刊をアピールする気がまるでない。そもそもライトノベルはこんなどんな専門書でも置いてありそうな本屋でわざわざ買わなきゃならないようなものじゃないだよ。品揃えはいいかもしれないが、ここはあくまでサブ的な拠点としておく。決してライトノベルコーナーに小学生がいて「え?このおっちゃんも読むの?」みたいな目で見られたくなかったわけではない。



次に向かったのは大型スーパー内にある書店。普通の買い物客も多く、客層としては親子連れが多い印象。これは危険。大変危険。ライトノベルの対象年齢から大いに外れた俺にとっては子供は天敵。「あのおじちゃんあんなの買ってるー」なんて母親に話してるのを聞いたりなんかしたらもうここには来れない。ライトノベルなんか捨ててまっとうな人間になる決心をしてしまう。それはまずい。それ以前にそもそも品揃えが悪い。たいてい棚で幅を利かせているのは電撃文庫。それ以外のレーベルはほとんどお飾り程度でスペースの無駄だろと思うようなものしか置いていない。こういうところは大体そう。GA文庫ガガガ文庫も置いてないような本屋はお呼びじゃないってこった。



次に向かったのは小さな個人経営の書店。町中の本屋さんとさん付けで呼びたくなるような佇まいの店だ。しかし見た目とは裏腹にこういうところは品揃えに期待ができることがある。本を置けるスペースが少ない代わりに本の種類を絞って揃えている可能性があるからだ。また、店には長くは置かないが新刊は揃えているという場合もある。自分の趣味と合致すれば店の大きさはもはや関係ない。そこで俺のようなやつが探すのはアニメやゲーム系の雑誌を目立つところに置いてある店だ。同時にライトノベルも揃えてある可能性が高いからだ。俺が向かった店は外から美少女キャラのポスターが見えた。店の外観は非常にみすぼらしいが、それは関係ない。これはいい兆候だ。どうやら雑誌類も置いてあるようだ。店内に入るため近づいてみると、奥になにやら仕切りがあるのが見えた。どうやら18禁コーナーらしい。これはいけない。大変いけない。店の傾向がエロに傾いている。ここには俺の望むものはなさそうだと後にすることにした。別の期会に利用させてもらおうと心に留める。



次に向かったのは複合量販チェーン店。というかTSUTAYA。規模はそれなりに大きい。店内のライトノベルコーナーにいくと今までの書店とは違うことに気が付いた。立ち読み客がいたのだ。見た目にいい年した大人が占領しているティーン向けスペースは非常に近づき難かったが、俺にはその姿が何故かとても頼もしく見えた。やはり同じ嗜好を持つ者同士、辿り着くところはいっしょなのかもしれない。新刊の平積みもオーケー。ここを今後の拠点とすることにする。しかし理想の場所を見つけた今、立ち読み客はただの邪魔な存在でしかなくなった。狩場を見つけるのには役に立ったが、肝心の商品に近づくことができない。まさに諸刃の剣。ここで怖気づくようなやつはとっととおうちに帰りなというメッセージってことだ。



こうして俺の書店探しの旅は一段落することができた。
なお以上のことは完全に個人的な偏見なので内容は保証できない。