The Toaster Project: Or A Heroic Attempt to Build a Simple Electric Appliance from Scratch

The Toaster Project: Or a Heroic Attempt to Build a Simple Electric Appliance from Scratch


また地道に英語の勉強代わりに洋書を積み上げています。めっちゃ苦労するのは相変わらずです。
さてまた一つ読み終わりましたコチラの本「The Toaster Project」。
日本語の翻訳版だと「ゼロからトースターを作ってみた結果」ってタイトルになっています。匿名掲示板のスレッドタイトルみたいです。
副題に「〜 from Scratch(最初から、ゼロから)」とあるように、この本では一般的なトースターの製作を素材作りからやってみる事に挑戦したイギリス人学生の、数カ月に渡る悪戦苦闘を愉快にまとめたドキュメンタリーとなっています。素材から作るというのは単純に、トースターの本体に鉄が使われているのなら鉄鉱石から鉄を抽出することから始めます。プラスチックで部品を作りたかったら、ブラスチックを作るところから始めます。それから加工して組み立ててトースターに仕上げます。実にアホですね。素敵過ぎます。
ちなみに最終的にどんなトースターが出来上がったかというと、表紙に載っている写真がまさにソレ。あれ、トースターだったんだ…ってなること請け合いの衝撃的なビジュアルに、このプロジェクトが如何に難航したかが窺い知れますね。
著者の Thomas Thwaites(トーマス トウェイツ)さんは当時学生さんでして、アートの大学院の卒業制作でこの「トースタープロジェクト」を実施したそうです。何故こんな事をやろうかと思い至ったのか理由はいろいろ書いてありましたが、英語だったのでよく覚えていません。ダメじゃん俺。でももっともらしい理由でいくら取り繕っても、結局のところ「面白そうだったから」ってのが一番の動機じゃないかなと思いますけどね。だって、「素材作りから始めてトースターを作ってみました。結果はこれ(表紙の写真)です」って見せられたら一体何をどうしてトースターに見えないこれをトースターと言う事になったのか、すっごい気になるじゃないですか。
では目出度くトースター作りに取り掛かることになったとして、ゼロから作るとはいったいどういう事かを決める所から本書は始まりました。素材から作るといったって、例えば鉱石から金属を抽出するとしてもその鉱石を加工するための火はどうするのか、マッチを使うとしたらマッチを作るのか、マッチを作るための道具を作ることから始めるためにまずは素っ裸の状態から始めるべきなのか、そして私は散歩をしている人に通報されて警察のお世話になるのだろう…ってな感じで思いっきり脱線しながら、とりあえず地面から掘り出すのはOKという具合に落ち着きます。鉱石を作るためになんやかんや宇宙を創造する案は却下されました。
次に使う道具ですが、これも産業革命以前から変わらないのものだったらOKという事にしたようです。石を使って根性で木を削れるなら、同じ動作で鉄製品を使って時間を節約するのはアリという事です。その解釈を広げて電動ドリルはOKだけど、3Dプリンターは無しとの事。パッと見て作り方が分からなくなるような工作はしないという感じですかね。まあそれでも困難にぶち当たる度に拡大解釈とルールの再定義を行って強引に進むなど、割とフリーダムな感じで解決を試みるのが笑えます。鉄の抽出に何とか成功しても微妙な調整が難しくて不純物が多く混じってしまうという事で、最終的には火を使わないで電子レンジを使った精錬を行いますからね。とりあえず火力で溶かすところまでは出来たんだから、同じ高温にするまでの手段は大目に見ましょうという事です。
そんなこんなで原材料を求めてイギリスから西へ東へ各地の鉱山を巡る旅へ出発です。有識者のアドバイスを貰いながら、鉄、雲母、プラスチック、銅、ニッケルを集める事になります。ひとまず市販のトースターを分解して、必要最低限な原材料をまとめた結果がこの5つになったんですと。分解途中でコンデンサトランジスタなんかの電子部品が出てきたときに、これも一から作るのかという著者の葛藤と早々の妥協が笑えます。
数多くの困難にぶつかる中で果たしてトースターは完成するだろうか。当然表紙の写真のように完成はしますが、そこに至るまでの過程がメインですので道中の展開がとても楽しいです。そして少しふざけた題材を語る時に大真面目な言葉を使用すると面白さが引き立つってものですから、トースター作りを通してゴミや環境問題、自作のトースターに比べて滅茶苦茶安くて高性能な市販のトースターが売られている理由なんかについての思いも語られましていろいろ楽しむことが出来ました。
その代わり途中の英文は妙に難しかった感じです。大真面目に格好つけて語るものだから、もう単語が全然わからなくて非常にきびしー!読む前に電子辞書の履歴を消しておいてどのくらい単語を調べたか分かるようにしてみましたが、読み終わりまでに調べた英単語はだいたい277種類となりました。まだまだ苦労しますね。しかも単語の意味は分かっても、文章の意味が分かるかどうかは別問題という。
ノンフィクションは読みやすいと今までの経験から思っていましたが、内容の愉快さとは裏腹に予想外に手こずった一冊でした。