Charles and Emma The Darwins' Leap of Faith (71日目くらい)

Charles and Emma: The Darwins' Leap of Faith


途中で放置したりもしながら、なんとか読み終わる。
自然学者のダーウィンさんが「種の起源」を発表するまでに超悩みまくった様子と、それを支えた奥さんとの愛にあふれた夫婦生活を描いた伝記小説です。児童書の範疇に収まる本なので内容は難しいものではありませんが、小中学生レベルの英語が簡単かどうかは別問題。ちょーむずい。たぶん学校教育(もちろんアメリカ)で習うレベルの表現しか使われていないと思うのですが、私にゃギリギリアウトな難易度でしたよ。ええ、景気良く途中からフィーリングで読んでいきましたよ。
そんな感じで本日はこちら「チャールズ アンド エマ ザ ダーウィンズ リープ オブ フェイス」です。
ダーウィンさんといえばビーグル号に乗ってガラパゴス諸島へ行ったお話が有名かと思いますが、この本の開始時点でそれらのエピソードは全部終了済みの、もうすぐ30歳とお年頃のダーウィンさんからスタートなんですよね。ダーウィンさんの生い立ちとかビーグル号による5年にも及ぶ航海の様子とか、後々の研究成果にも大いに関係するような初動の様子は、大胆にカットされているのです。これは少し驚きました。ではこの本には何がいったい書かれているの?といえば、そりゃもう「結婚」以外の何ものでもないのです。同じくアラサーの私には実にホットな話題です。親戚一同の集まりで、同年代の親戚がみな夫婦参加で一人だけ独身で参加した時の、私への風当たりは非常に過酷でしたね。子供たちが元気に走り回る中の幸せタイフーンで、身も心も蹂躙されつくした私に人権はほぼ無かったでしょう。返事はYES(結婚)のみ認められます。
さてそんな悩みは200年前でも変わる事は無くて、当のダーウィンさんも「結婚するべきか」「結婚しないべきか」とノートに書き出してそれぞれのメリットとデメリットをずらずらと書き並べてお悩み中です。ちなみにそのメリットとデメリットも「研究の時間が減る」「無駄」「でも将来寂しい」「そばに犬がいるよりマシ」などと、あぁ結婚してない男が良く考えそうな事だわ…とこちらも不変な理由で実に分かりやすいものでした。
ただダーウィンさんが私と違うのは、結婚できないのではなくて結婚しようと思えば相手は直ぐに見つかる事なんですよね(チクショウ何てことだ!)。ダーウィンさんのお父さんは医者ですし、お家には使用人を何人も呼んじゃうようなリッチモンドな家系ですからお相手も選り取り見取りってなもんさ(そうさ僻みさ)。ええ、もちろん実際にはダーウィンさんはそんな事をする無粋な男性じゃありませんけどね。純粋に結婚するべきか否かと悩んだ後は、相手はやっぱりいとこのエマさんだろうと、以前から意識していたらしき女性にすんなりと決断します。
そしてここでこの本のメインテーマでもある大きな問題に、ダーウィンさんは直面することになるのです。ダーウィンさんが長い航海から帰ってきた時点で種の自然選択の考えはあったわけですが、当時は神様が全ての生命を創り出したという考えが主流ですので、生命が同じ祖先から進化したという考えは当時の宗教観にそぐわなかったのです。別にダーウィンさんはキリスト教を否定したいわけじゃないんですけど世間がどう思うかは別問題、なにより結婚相手に選んだエマさんは熱心なキリスト教徒でしたのでマジどうすんだとの苦悩が描かれるわけです。
死後に善人は天国へ行き悪人は地獄に行くという教えは、当時の医療事情を背景に思えば信じることは変ではありませんでした。作中でも描写されますが、伝染病が蔓延して親しい人が病に倒れたとき、治療の甲斐もなく何日も苦しそうにした挙句にあっけなく死んでしまう光景が日常のすぐそばで見られるような世の中で、せめて故人は死後に安らぎを得たのだと思いたい気持ちは良く分かります。誰からも愛されるようなあの人が何故、まだまだ子供だったあの子は何故苦しまなければならなかったのか、その先に待っているのは天国でもないなんて悲し過ぎるのではないか。せめてもの願いは、やがて信仰へと変わるわけです。
ダーウィンさんからエマさんへのドキドキ告白タイムも無事に消化すると二人は目出度く夫婦になりますが、熱心な信徒であるエマさんは進化に対する旦那の考え方は神様への背信になっちゃわないのか、死後の世界で再開は出来ず永遠に離れ離れになるんじゃなかろうかと本気で心配する日々。ダーウィンさんは奥さんの事を本気で信頼しているため、嘘を吐かずに自分の考えを早々に打ち明けたんですよ。世間に問う前に、二人でこの問題に立ち向かうためにですね。ラブラブですね。マジラブラブな夫婦でしたよ。ダーウィンさん最後の時にも「思い出しておくれ、君は僕にとってどれだけ素晴らしい妻だったかを」なんて言うくらいですから。いや、これは涙腺に来るわ…。
30歳のだいたい同い年で結婚した後に10人のお子さんにも恵まれ、途中友人や幼い我が子を亡くすという哀しい出来事もありながら歩むこと数十年。本書もページの多くをその道中に費やし、ビーグル号の航海から20年以上後、お話も最後の辺りに差し掛かってようやく「種の起源」が世間へと発表されました。「種の起源」の進化論が世間に与えた影響は有名ですが、本書はそこに至るまでのダーウィンさんの人柄とエマさんとの長年の信頼関係にスポットを当て続けて、一つの夫婦の姿を描き出しています。種の起源の出版なんて最後のおまけですよ。
英語の読解力が足りなかったため、この夫婦が折り合いを付けた進化と信仰に対する思想をちゃんと理解できなかったことが悔しく思われる。なんだかとっても幸せそうな夫婦だったのは分かった。本を読む力をもっと付けたいものです。まだまだ足りないかぁ。