2 (メディアワークス文庫)


好きな本 ぼしゅうのコメントより。
>野崎まど先生をおすすめします。ブログを拝見したところ、アムリタ以外は読んでいらっしゃらないようですので…(読んでいましたらすみません)
"舞面真面とお面の女" "死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死" "小説家の作り方" "パーフェクトフレンズ"を読んだあとに『2』を最後に読めば終わりです。(2以外はどれから読んでも大丈夫だと思います)
アムリタを読んだ時も衝撃的でしたが、2を読み終わった時はそれを越えました…。前情報なしで読むことをおすすめ致します!


おすすめありがとうございます その5。前回パーフェクトフレンドを読んで、これで"舞面真面とお面の女" "死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死" "小説家の作り方" "パーフェクトフレンズ" 後おまけに "[映]アムリタ" の5つを読み終わったことになります。結構時間がかかってしまいましたが、これで準備おっけーですね。最後の「2」へと進んでも大丈夫でしょう。凄い検索し辛いタイトル。

(読む)
 ↓
(; ゚Д゚)  なんじゃぁこりゃぁ!!?
(; ゚Д゚)   ああああぁぁぁぁぁああ!!?
はい、こっから先はネタバレとか気にしないフリーダムで行くから要注意だぞ!












<〜ここから〜>
この「2」というタイトルだけではもはや何も分からない本のページを捲ってみますと、一人の大学生がプロの劇団のオーディションを受ける場面から始まりました。国内でも有数の実力を誇る劇団に挑戦する、割と平凡な大学生の主人公。ここまで5冊も別の本を読んで準備してきた私ですが、初めて聞く名前の人物です。この本を読む前にあらすじとかも読んでませんので、見知らぬ舞台に見知らぬ主人公で他作品との繋がりがさっぱり分からないスタートですね。
この主人公、数多(あまた)くんはこれから演劇の世界で目立たないながらもプロの世界で奮闘することになります。というかお前役者のくせに華が無いとか致命的じゃないかと思わなくもないですが、容姿が美しい女優の卵、熱狂的な脚本家志望、自然と周りの人を動かし始める根っからの制作進行役など、オーディションに合格した様々な個性に囲まれて挑むは最初の課題、新人だけで行われる内輪の演劇を上演すること!観客は劇団の先輩たちだ!15人の若き才能たちは己の全力を持ってこの課題へと挑戦します。時に励まし合い、時に競い合う姿を見ると、みんな演劇が真剣に好きなんだなぁという熱意が伝わってくるようでした。
華が無い主人公くんは端役で参加していまして、お前演劇の世界で謙虚に生きてどうするよと真っ先にクビになりそうな不安感を余所にここで問題が発生しました。初めて見るプロの世界の裏側、舞台稽古を目の当たりにした新人たちがあまりの実力差に自信喪失して次々脱退!15人が一気に3人へと縮小してしまいます。やはりある程度は実力がある人たちなんでしょう、自分の力が及ばない世界から離脱する勇気も持ち合わせています。私だって仕事で出来もしないプロジェクトに配属されるのは嫌ですもん。それでも残ると決めたのは、自分ならやれると相当な自信を持つ実力者か、はたまた無謀さが分からないただの阿呆か…。残留組の主人公くんは、ただ残っただけの阿呆なのでしょうかと不安が募りました。
15人で演劇やるはずだったのに3人とかこれもう終わったなと思いましたが、なんとこの3人はそれでも演劇に立ち向かうという決死の行動に出ます。しかも演出で1人、舞台進行に1人と裏方を除いたら、主演俳優は主人公くんたった1人になっちゃったよ!一目見た新人たちの自信を喪失させる演劇をする先輩たちの前に、たった一人で舞台に立つというこの主人公くんの心意気!凄まじく辛い未来が見えてると言うのに、それでも挑戦するというこの展開のなんと熱い事か。苛烈な演劇の洗礼を受けて成長する逞しい姿が心に響きますね。試練を乗り越えて、主人公くんたちは目出度く劇団員の一員となったのでした。
挫折あり苦悩あり葛藤ありでいやー良い青春ドラマだなぁと思っていた所に、ぽつんと新しい人がオーディションを受けにくることになります。彼女の名前は最原最早(さいはらもはや)。[映]アムリタで主人公だった人じゃないですか。たしか観た人の精神がおかしくなるくらい凄い映画を撮ろうとしてた人。よかった思い出せたとほっとしていたら、彼女の演技を観た劇団員の人たちの精神がおかしくなって劇団解散。ろくなことしないなこの人!
その後は最原さんがお話の主導権を握り、まさにアムリタ2の如く映画撮影へと話は展開していきました。"これまでの映画は全て…過去のものとなります"という、"全てのRPGを過去にする"のフレーズが盛大にネタにされたPSU(ファンタシースターユニバース)を彷彿とさせる不穏なキャッチコピーでスポンサーをお願いしに行ったのは、"舞面真面とお面の女"で主人公だった真面(まとも)さん。これはもしやと、ここまでくれば流石に想像できます。いままで読んだ作品の登場人物たちが次々と登場するに違いない!これはアムリタの2であって舞面真面とお面の女2であって死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死2であって小説家の作り方2であってパーフェクトフレンズ2(なげーよ!)というわけだ!こいつは盛り上がってきたぞ!
他の作品で存分に才能を発揮した主役たちが集って、もうアベンジャーズ状態で取り掛かるはもちろん最高の映画です。狐面のみさきさんは強キャラ風味で周りに脅しをかけつつも毎回ボコられ、パーフェクトフレンドで委員長だった子はここでもさり気なく殺されかけ…、各々の持ちネタも存分に発揮しながら道中は進んでいきました。
読んでる途中で「あの人とあの人は出たけど、あの人はまだだな」と各々の登場をドキドキ待ちながら読み進め、ようやく過去作品の主人公が出てくると「イヨッ!まってました!」と心の中で拍手喝采てなもんです。今までの作品を読んでいたからこその面白さが各所に散りばめられています。そこまで豊かな人材を投入して造り上げようとしている映画がいったいどんなものになるのか、楽しみでしょうがないですね。
ですので周りをかき回しつつお話の中心にいる人物、主役たちの中の主役である最原さんが首ちょんぱで薄笑いを浮かべていたときは本気で何やってんのこの人!?と思いました。マジでろくなことしないなこの人!
作中でもしっかりと言われてますけど、「2」とは完璧なエンターテイメントとして今回作った映画の事で、じゃあ前作の「1」って何さっていうと、それを楽しむ完璧な観客のことだったんですよね。最高に楽しむために必要な知識を備えた視聴者が「2」を観ることによって完璧となる。この本を読むためにアムリタから始まる5作を読んだ読者はある意味「1」なわけで、つまり俺だって「1」みたいなもんだ!という疑似体験が楽しめます。ところで「2」と「1」が完璧に合わさると人は神様になれて、失敗しても天使になれるようなんですが、神様にも天使にもなれなかったっぽい私は何になったんでしょうかね?作中で余ってる役どころって豚ぐらいしかないんですが。ブヒィ?
後半のどんでん返しの連続もさることながら、この本「2」だけでなく実は他の5作品も読んでないとついていけない所がある禁断級の大技を繰り出してきたお話が盛り上がらないわけがありません。全部読むのは大変かもしれませんが、全部読んだ私には関係ないもんね!アムリタを読み終わった時と同じ衝撃力があったことに加え、「終わりの一言もいっしょじゃねーか!」とそっくり具合に思わず笑ってしまいました。