死なない生徒殺人事件 〜識別組子とさまよえる不死〜

死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死 (メディアワークス文庫)


好きな本 ぼしゅうのコメントより。
>野崎まど先生をおすすめします。ブログを拝見したところ、アムリタ以外は読んでいらっしゃらないようですので…(読んでいましたらすみません)
"舞面真面とお面の女" "死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死" "小説家の作り方" "パーフェクトフレンズ"を読んだあとに『2』を最後に読めば終わりです。(2以外はどれから読んでも大丈夫だと思います)


おすすめありがとうございます その2。
前回は「舞面真面とお面の女」を読みましたので、次はこちらの本「死なない生徒殺人事件 〜識別組子とさまよえる不死〜」を読んでみました。タイトルに殺人事件と付いていて、何やらミステリーのような予感がしますね。
さて死なない生徒の殺人事件とは何ぞや?死なないのに死んじゃうの?という殺人事件が成立しそうもない矛盾した題材がまず目につきますが、先人のミステリー作家さんたちはこういった無茶な状況でも割と平気でトリックを成立させますから特別不思議でなことではありません。例えば未来を見通せる能力があるので犯人なんかすぐ分かりそうだけど殺されてしまう案山子のミステリーとか、死者が蘇るという不思議な現象が発生しているので被害者が蘇って即刻犯人が分かりそうだけどもそうもいかないミステリーとか、同じ日を9回(9日)繰り返せる特異体質があるからたまたまその日に居合わせた親戚の家で起こった殺人事件の犯人なんてすぐ分かりそうだけども分からないミステリーとか、ぱっと思いつく限りでも無茶な状況だろうが殺人は起こる時は起こるもんです。怖いよー!(ちなみにそれぞれ、オーデュボンの祈り、生ける屍の死、七回死んだ男 っていう作品)
分かった!死なない生徒が殺人事件を起こす側の話なんだね!?と視点の転換で矛盾が回避できるかと思いましたが、このお話では死なない生徒はちゃんと死んじゃう側なので安心してください。さあミステリー開幕ですね。
お話は、主人公の理科の先生が、幼・小・中・高一貫教育の女子校へ赴任してくるところから始まります。前の高校は人員削減でリストラされちゃったらしいのですわよ奥さん。教員なのにあっさり解雇されるとかなんて世の中だ。でも再就職先の女子校は割と優しい世界の女子校でしたのでお兄さんも安心して魅惑の花園に訪問することが出来ます。
主人公の先生 伊藤は新しい学校生活で気のいい同僚と美人の先生と仲良くしながら、ある日ちょっとした学校に伝わる噂を耳にすることになります。この学校には永遠の命を持つ生徒がいるという、どこにでもある学校の七不思議的な噂です。その噂は生徒の間でも長年に渡りどこでも語り継がれているらしく、受持ちのクラスにいる転入生も永遠の命の生徒の存在を知っていました。ちょうどその転入生と一体どの生徒なんだろうねと話していると、たまたま掃除で通りかかった生徒が人の噂話とは感心しないなと間に乱入。まさかの本人登場に事態は一気に次のステージへ。この生徒は本物なんだろうか?永遠の命とはいったいどういう事なのだろうか?突然出くわした現実ではありえない謎めいた出来事の混乱が収まりきらないうちに、やがて死なないはずの生徒が首を切られた姿で発見されることになるのでした…という感じのお話。
その後は当然殺人事件の謎を巡る話となるのですが、トリックがどうのとかアリバイがどうのとかそういった謎解き要素は結構簡単に流されて進んでいきました。それほどお話の中では重きを置かれていない様子です。というか死なない生徒は生きてますし。当然「どういう事なの?」となりますが、これからのお話ではもちろんそこをメインに進んでいくことになるのです。全ては永遠の命の謎へ。
ところでネタバレになりますからなるべくあやふやな書き方をしますけど、例えば一人に「付き合って!」って告白してOKを貰ったら他の人たち的にはどうなるんでしょうかね?まさか一気に彼女が複数人になるってことなのかな?まさかまさか「今日の彼女は用事が入っているから無理かぁ」「でもこっちの彼女は空いてるから一緒に出掛けよう!」とか出来るんですか?まさかまさかまさか「大人の魅力も捨てがたいが、今日はまだ子供っぽさも残る活力にエンジョイするのも悪くないね」とか出来ちゃうんですか!?まさかまさかまさかまさか何とか手短な相手と好感度を上げる事に成功すれば必然的に憧れのあの子の好感度も上がってホントは君が一番だったんだとか出来ちゃうんですか!まさかまさかまさかまさかまさか結婚とかしちゃってもたまにはその手短な相手に戻ってキャッキャウフフしても何も問題ないってことですか!しかも選べる嬉しさ幼・小・中・高・先生!(アンダー低すぎぃ!)。そうなんですか!そうなんですね!サンキュー神様!
基本このお話で完結するような終わり方をしていますが、何かと謎のまま終わっている部分もあり微妙にスッキリしない部分はやっぱりあるように思えます。あれ、なんかこの感想にデジャブを感じる…。こう、ボリュームは違いますけど漫画の1話目のような感じと言いますか、平和な日常を乱す敵が登場!→そこに主人公も登場!→主人公の特別な力は敵を見事に退ける!→そんなやつがいるなんて!と敵は倒され平和が戻った→突如現れた主人公、彼の力の秘密とはいったい?2話目に続く!みたいな話を読んだ満足感と、今後の謎が残るもやもやが同居します。心臓って結局なんだったんだよ!とか。
これが出たばかりの時に読んだとしたら「ハイハイ、2巻に続くね」と思ったかもしれませんが、5年近く経った現在でも2巻らしきものは無いんですよね。おんやぁ?2巻となぁ?なんだか引っかかるよーなそうでもないよーな…。今はよう分からんです!