魔王っぽいの!4

魔王っぽいの!〈4〉 (ガガガ文庫)


最近まおゆうがTVアニメ放送中でにわかに盛り上がってる魔王と勇者ものだが、ここにひっそりと終わりを迎える作品があった。
魔王なのに勇者と仲良くしていたり、魔王なのにバイトをしていたり、魔王なのに家賃が払えなかったりと様々なしょーもない魔王がここ1,2年にぽこぽこ出てきたが、この「魔王っぽいの!」はそもそも魔王じゃないっぽいと更なる変化球を付けて投げられたある意味尖っていた作品だった。それがどうやら尖り過ぎて打ち切りになったっぽい、だった。ちなみにバイトしてる魔王と家賃が払えない魔王はまだまだ元気でやってるようだ。
好きか嫌いかで言えば僕はこの作品が好きだ。ただこの巻は、裏のあらすじを読んだ時点で最初の60ページ(全体の1/4)が読むのが苦行になるほど、7行のあらすじ程度の内容で遅々として進むのは紛れもない事実だ。読者なめとんのかコノヤロウ。この程度で俺が投げ出すと思ってんのかコノヤロウ。俺は分かってんだぞ、今回の「魔王がいちゃいちゃしてくるタイプの勇者になっちゃった颯太をどうするかで魔王選挙を行う」なんてわけわからん設定でお話を進めることがどれだけ無謀なのかをな。いったいどうやったら面白く出来るのか想像するだけで震えるというのに、一行一行少なくとも物語が破綻することだけは辛うじて避けつつ進むこのスリリングな道中は、むしろ物語としての体裁を整え続ける作者とそれを読み続ける俺とのチキンレースだ。このレースに勝者はいない。
どうやら作者の方も今回の設定がかなり効いているらしく、いつも以上にギャグに充てるリソースと余裕が感じられずになんだか「が、頑張れ!」と手に汗握って応援している私がそこにいた。一巻からの定番ギャグ「凄そうに見えてバーベキューセット破壊専用魔法」も繰り出すが、それでも現状のテンションを維持するので精一杯だ。道中の様子を自ら文章で「ぐだぐだ」と表現した時はお前が言うのかと一瞬本気で切れそうになったが、私の方もだいぶ余裕がなくなってきている旨をご理解いただきたい。
ただこのお話が終わったとき、僕は少し寂しさを感じてしまった。正直言うと、僕は次の巻も買うだけの元気がまだあったからだ。駄目なのはいつもの事なんだから、また一緒に次の巻も頑張ろうなと作者に(勝手に)信頼関係みたいなものを構築していたからだ。でも作者が筆を置く時の方が早く来てしまった。数カ月ごとに1時間ほどの時間と600円を無駄遣いする僕の楽しみが一つ無くなってしまった。
これからアニメ化する作品もあるようで、まだ少し魔王ブームは続いていくと思っている。恐らくというか、絶対この作品はこの後の魔王達の間に埋もれていくだろうけど、というか埋めちゃったほうが良いかなと正直思ってもいるけれど、僕はこのシリーズを楽しんでいたという事をちょこっとここに書いておく。