【辻村深月】オーダーメイド殺人クラブ

オーダーメイド殺人クラブ


感想書きます。2のコメントより
>クリハラさんの嗜好と合うかはわからないのですが、辻村深月さんの「オーダーメイド殺人クラブ」を推薦させていただきます!実は私も昨日読了したばかりなのですが(笑) まだ文庫が出ていないので、図書館で借りました;; 主人公二人に心まるごと持っていかれてしまって、今でもビリビリ痺れている感じです。
ざっくり説明すると、いわゆる「リア充」女子のヒロインが、けれど心の中には闇を抱えていて、同じ闇を共有できると思った隣の席の男子に、衝動的に「私を殺して」と依頼する…という話です。(ものすごくざっくり) 登場人物がまんま中二で、ヒロイン自ら「中二病」と称する、そんな匂いは漂う作品ですが、なんだかもう…やられてしまいました!辻村さんの作品は、こう、ものすごく心揺さぶられるものがあって、他の作品も大好きです。
もし良かったら、ぜひお手にとってみてください^^


辻村深月さんですね。了解しました!
この方はメフィスト賞というミステリー系の賞を受賞してデビューされた方で、私もメフィスト経由で作者さんの名前を知っていました。その受賞作は読んでいないのですが、作者さんが気になって「凍りのくじら」という作品を昔読んだことがあります。
凍りのくじらはメインのお話にドラえもんの道具をモチーフにした話題を取り入れてくるという特徴を持っているのですが、ドラえもんの単行本全45巻、大長編ドラえもんを8冊、幼少期には家族団欒にアニメを嗜むという、一般教養はばっちりだと思っていた私を軽くあざ笑うマニアックな道具を採用しており、「原作を持っているだけでは駄目なのか…!!」と作者さんのセンスに戦慄した憶えがあります。
そんな数年ぶりの作者さんなのですが、本日のコチラ「オーダーメイド殺人クラブ」はどんな話になってるんだろうと少しワクワクするものがありました。
お話の方はご紹介頂いた通り、元気溌剌 賑やかな友達に囲まれている中学2年生の少女が主人公のお話でした。現実世界での生活が充実しているという事で「リア充」のグループにいる女の子です。おのれリア充!俺がリア充は爆発しても良いと思っている側と知っての狼藉か!ではとくとそのリア充ぶりを見せてもらおうか! とさっそくページを捲ってみたところ、いきなり女子生徒のギスギスした人間模様が繰り広げられていて俺に大ダメージ!
( ゚Д゚)・∵;;  ぐっはぁ!全然リアルが充実してないじゃないか!
女子生徒同士が集まって他人の陰口は上等、誰もがターゲットにならないよう神経を研ぎ澄まし続ける過酷なクラスルームがそこに広がっていました。こんなんじゃオチオチ休み時間に自由にトイレにだって行けやしません。どういうわけか女の子は大きくなっても一人でトイレに行くことが出来なかったりするんですよね。グフフ…しょうがないなぁ、いつまでもそんなところの面倒を見なくちゃいけないなんて…え?そういう意味じゃない?
まあ確かに傍目には友人がいて彼氏がいて部活で汗を流してと、現実世界が充実してはいますよね。逆に自分の心の中や人間関係なんかの目には見えない所に鬱屈を抱えているのは、充実していないのは非現実の方だと見なせなくはありません。そんな鬱屈を溜め込んだある日、河原にネズミの死骸を捨てているクラスメイトを見かけて、思わずアンタが殺したの?話しかけてしまうことをしてしまいました。このクラスメイトの男、家に湧いた害獣を駆除するためとはいえ生き物を弄んでいた現場を見られどう反応するかと思いきや、一言「ネズミのこと、かわいいって思ってる?」と唐突な話題転換。その後ハムスターや、ネズミやミッキーマウスの違いについて少しは意識してる?と逆に問いかける事をしてきました。この瞬間私は「この男…出来る…!」と心の中で呟いたものです。
ええ、世の中の人間にはネズミなど一括りにしてしまう方もいますが、彼らにはやはりはっきりとした違いがあるのです。ハムスターとマウス、ラットは別々のものであり、ドブネズミは害獣、ハム太郎はもっとおぞましい何かなのです。ハムスターとハツカネズミを同じ愛玩動物で違いを付けない人もいるでしょうし、うちのばあさまなら全ては農家の敵であり殺害対象でしかないでしょう。まさにこの男がお話のもう一人の主人公なのですが、ネズミに対する見識から一瞬で私は彼の素性を見抜くことが出来ました。主人公の女の子が「昆虫系」と評する、ダサい主役の登場でした。
そして何よりこの男が凄いのはここから。ちょっと斜に構えたい思春期モードの少女が、自分の名前が昔処刑された極悪の女王と同じだと知ったとき、「あ、これは中二スイッチが入ったな」と私は直感的に悟りました。案の定、少女は「私も殺して」と少年に無茶なお願いをするのですが、彼は二つ返事で了承します。彼の此処からの行動は実に見事で、一級品のエンターテイナーぶりを見せてくれるのです。
この少年は所々キツイ物言いをしたりマジモンの死体写真を渡したりガチの殺し方を考えさせたりと、少女をドン引きさせるような行動をするのですが、私には最初からその度に「生きろ」と死にたがる少女に機会を与えているようにしか見えませんでしたね。少女の死にたいという期待に応え楽しませつつ、途中で怖気づいて止めてしまえるような際どい線を上手い事ついているようでした。本当に殺すなら逃げられない状況まで持っていくべきでしょうが、そんなことは一切せず少年は自分の意見をほとんど言わずお客様の注文にただ頷くだけでした。どう見てもプロの接客態度です。それになんだかんだ言って最終的に殺すかどうかは少年の手で決めることが出来ます。もう私はこの少年が少女のためにどんなショーの幕引きを用意してくれるのか、それが楽しみになってきていました。うん、最初から殺すことはほとんどないだろうなと思ってた。
そして相変わらず一人でおトイレに行けない日々が続くリア充少女の現実世界。よくもまあ自分のことを棚に上げて他人の悪口を言えるもんだと感心してしまいますね。まあ作者さんの怨嗟が込められてる気がしますが、ここの女子中学生ってホント野蛮やわぁー。これで死にたいなんて言ってる日にゃあ、私の敬愛する作家、森見登美彦の死に様(死んでません)を貴様ら心に刻めぃ!と言いたくなるのも仕方がないことです。モテぬ男が自らの下劣さを自覚し、色欲を戒めるときに使っていた言葉です。「恥を知れ。しかるのち死ね」(by夜は短し歩けよ乙女)まあこの人はいつも潔く死に過ぎだと思いますけど。
さぁ次第に固まる計画の全容、近づいてくる決行日、ショーのクライマックスはもう直ぐそこまで来ています。
いったいこの自殺計画は成功するのか、何がこの先起こるのか、詳細をばらすような無粋な真似はよしましょう。こういう時はいつも漏れてしまった私の心の叫びで代えさせてもらっています。
( ゚Д゚)  徳川かっけぇぇぇぇ!!!
なんか窓を開けてヒロインが叫んでる場面で一緒に「徳川あああああ……っ」て叫んでました。これはもうオーダーメイド殺人の素晴らしい仕上げ方じゃないですか。金を貰っても良いレベルです。が、このアンって子いつだって自分勝手。というか徳川も少しは自分の意見を言えぃ!とは思いますがね。まあ、とりあえず俺に起爆用のスイッチを渡してくれませんかね。あいつら盛大に爆発させますから。無理なら俺を爆破しろ!(満面の笑みで)
現実がリア充だった女の子が非現実の方も充実させる、最強のリア充になるお話で面白かったですね。あ、お話にのめり込んでだいぶ長くなってしまった。