絶望センチメンタル

絶望センチメンタル (メディアワークス文庫)


ホッホゥ、これは最初っから最後まで阿呆な大学生の珍道中で突っ走った「おちゃらけ王」の人じゃぁないですかね。
そのおちゃらけ王とは、ファンタジーなのか妄想なのか判断に困る不思議世界な日本で、阿呆な騒ぎを起こしながら借金取りと鬼ごっこをする愉快なお話でありました。一通り楽しんだ後、私は次の作品があったらこの作者さんが書く阿呆なお話をもう一度見てみたいと思ったものです。それから少しばかり月日が流れて、本日のこちら「絶望センチメンタル」とのご対面となったわけでございますね。
さてと、それではこの絶望センチメンタルとはどういったお話なのかと軽くメディアワークスのHPで確認してみましたところ、高校生の少女と小学生の男の子が何やら暗い雰囲気で旅をするお話のようでした。ふーむむ、まあ腐れ大学生を扱った「おちゃらけ王」は何かとモリミーとかマキメーとかそんな感じの風味が醸し出されてしまう宿命みたいなものを背負わざるを得ませんでしたから、前作とは違う路線で進んだことは新たな作者さんの一面と出会えそうで楽しみなところではありますね。この方ならではの個性を発見できるチャンス到来と言ったところ?
ちょうど200ページ程の若干スリムな分量で、今度のお話はどんなのかニャ?
(読む)
 ↓
(; ゚д゚) う、うわー楽しくねぇー…
こ、これは前作と同じ阿呆な人間のお話ではあるかもしれん。だけども彼女らは愛すべき阿呆ではなくて、言うならば悪い意味で阿呆な人間の道中のお話ではないですか。素か?これが素なのか作者さん?ないわー…
うっかり高校をサボっちゃった少女が、町で面白そうな事をしている小学生を見つけてこれ幸いとばかりに暇つぶしにちょっかいをかけることにします。行く行く聞けば、小学生はこれから死ぬ前にやるべき事を決めていて、それを実行している最中だったとのこと。内容はいじめっ子に復讐をしたり、気になっていたお店に入ったり、ハンバーガーを店から強奪したりと一見何の脈絡もなさそうな事ばかり。ふーむ、なんだかどうでもよさそうなものしか並んでないような気がしますが、これから死のうとするのなら確かにこの世界の事なんかどうでもよくなっているでしょうし、どうでもいいものの前にどうでもいい事をするのはそんなに分からないことでもないと思いました。そして所詮は小学生が考えてた計画よろしく、悉くそれらの行動が失敗するのも現実ってこんなもんだよねと分からないものではありません。ただその行動が面白いとか楽しいとかじゃなくて、とっても痛い。とっても恥ずかしい。何これ、読者に対する拷問?
行き当たりばったりで進む彼女らの前に、私はもはや何もいう事が出来ません。まあ自殺しようとしてる人間がロクな人間じゃ無くても別におかしなところはないかな…。道中はどうでもいい事ばかり続きましたが、最後の方はタイトルにあるような「絶望」感も「センチメンタル」な雰囲気も演出されてきてなかなかいい感じじゃないかと思いました。
そして読み終わった後思ったのは、さーて馬鹿なことをやってないで生きるか…という感想。作中の小学生くんも最後にきっと同じような事を感じたと思いますが、ゴメン、どちらかと言うと俺は小学生くんの方を見ながらそう思ったわ…。
お話の雰囲気とかで良かったところはありますが、だからと言って分かってて手を出すもんでもないなこれ…