アナン、

アナン、(上) (講談社文庫) アナン、(下) (講談社文庫)


年の終わりと始まりに、昔読んだ本を読み返してました。
どうもこんばんは。本日のこちらの本は飯田譲治氏と梓河人氏の共著による作品「アナン、」でございます。「、」は忘れずに。
どちらかというとこの作者さんは脚本とか演出家とか、そんな方面で活躍する方のようでして、作風の方も作品の整合性よりもとにかく楽しいことを盛り込んだエンターテイメントに溢れたお話にしてくれることが多い感じがします。
そんな感じでこの「アナン、」も、一人の少年の成長物語と共に実に様々で結構無茶な出来事が起こる大変楽しいお話となっております。
雪の降る夜、自殺しようと街をさまよっていたホームレスがゴミ捨て場で赤ん坊を拾うところから物語は始まります。この拾われた赤ん坊がタイトルにもなっているアナンくんであり、いきなり人生がベリーハードモードで始まるというとてつもないハンデ戦の始まりでもありました。拾ったホームレスも主人公の一人なので、彼が責任もって幼少期のアナンくんを育てるのですがまさに最初は生と死と隣り合わせの連続の日々。ベリーハードモードは伊達じゃありません。
金もない戸籍もない年端もいかない、日々の食事に事欠くどころか病気をしたら一発アウトの状況で進む序盤はハラハラの連続です。一人ひとりでは無力なホームレスも、集まれば大きな力に…なったらいいなぁ…と、なんとも頼りない連中なのですが、そこは奇跡と神様(作者)の采配で辛くも乗り越えていくことが出来ます。でもすぐに次なる困難が来るので心休まる暇は少ししかありませんけどね。
こんな状況じゃ子供のお先真っ暗だよと思いますが、もしその子供が奇跡的に天使のような子供だったら?もしこんな状況でもグレることなくまっすぐ育つほどの純粋さを備えていたら?そんなことはものすげぇファンタジーじゃなきゃあり得ませんが、そんなものすげぇファンタジーで突っ走った先を見せてくれるのがこのアナン。
都合が良すぎるご都合主義? ノンノン、ご都合主義の面白さを認識しなされ。
誰もが魅了されるアナンくんと、不器用ながら一生懸命にアナンくんを保護するお父さん役のおっさんの厳しくも温かな気持ちになれるお話です。
すごいよ。けっこうドキドキワクワクの大冒険とかするよ。面白ければいいじゃん!なバラエティ的なノリがたくさんあるよ。
ちなみにアナンくんがこのお話の後どうなっているかは、同じ作者の「盗作」という作品で少しだけ見れたりします。お話のぶっ飛び方は「アナン、」以上のエンターテイメントなお話ですが、ゲストキャラみたいな扱いで係わってきますので、元気でやってる姿を見たい方はチェックしてみるのもいいかもしれません。大きくなってもアナンくんは良い子でしたよ。
いやぁ、面白いお話は何度読んでも面白いですね。