【久保寺健彦】空とセイとぼくと

空とセイとぼくと (幻冬舎文庫)


ぼくのなまえは零!育った場所は上野公園の、筋金入りのストリートキッドだー!
物心付く前からお父さんと一緒にホームレス生活をしていた少年の成長の物語です。旅のお供に白い犬が一匹付いてます。
以前に読んだこの作者さんの「ブラックジャック・キッド」は、自分も経験した小学生時代の感覚を思い出させてくれるような、何とも言えない空気感をもった作品でありました。この作者さんは少年のお話を書くと面白そうなので、それっぽいのを一冊チョイス。チョイスをしたは良いもののこの主人公、日本の義務教育を徹底的に蹴っ飛ばしていきやがったので学校生活の匂いを再び感じることは出来ず、そこは無念な結果に終わりました。
凄ぇよ、この子に本当に小学校も通わせなかったよこの作者。しかもちょっと嫌なリアリティのあるホームレス生活を主人公の子供は送っていまして、お話しに対する作者さんの姿勢がよく伝わってくるようでした。嘘泣きをすると通行人から食べ物を恵んでもらえるとか覚える子供の成長物語ってキツイものがあるな…。あ、お話自体は元気な男の子のお話なんで暗い空気は全然ないです。
ただ見事に教育者に恵まれなかったせいで、主人公くんの行動はちょっと品が無いところがあります。ところどころチンコが主張しすぎるんだよ!ブラックジャック・キッドでもそうでしたが、唐突にエロい行為を入れたくなる癖でもあるんじゃなかろうかと疑いたくなってきた。
この教育の大切さを感じさせるような人物像を造り上げて、いったい作者さんはどんな結末にしようとしているのかと見ていましたが、特に何事もなく終わりました。うん、現実的といえば現実的だ。
頑張って生きてはいるのだろうけど、ただ流されるようにお話を進めていく主人公くんを見ているのは、つまらないといえばつまらないなぁという感じでしょうか。つまりどんなお話でも私好みに面白く書いてくれるような、ワガママな期待は少し無理っぽかったです。