金色の獣、彼方に向かう

金色の獣、彼方に向かう (双葉文庫)



俺は今無性にファンタジーに出会いたいんじゃぁ〜現実から離れたいんじゃぁ〜と悶々とする人々へ、せっせと空想世界を紹介してくれる作者さんはとってもありがたい存在です。
しかも何がイイって、この作者さんが描くお話って、どれもスタート地点が結構現実世界よりな場所から始まってくれることなんですよ奥さん。奥さんだって毎日同じことの繰り返しの生活に飽き飽きしてくることあるでしょう?旦那さんだって毎朝電車に揺られながら、いつも降りる駅の一つ先の駅へ、近いけど遠い知らない場所へふと乗り過ごしたいなと考えているかもしれないでしょう?
それならおいでませ恒川光太郎さんの世界へ。「金色の獣、彼方に向かう」へようこそ。
こちらのお話は4つのお話が入った、不思議だったりちょっと怖かったりする短編集になっています。
タイトルの金色の獣からカッチョイイ怪物が暴れてくれるお話なのかとの印象もありましたが、そんなね、情緒も風情もないようなことはこのお話はしませんのよ。“金色の獣、彼方に向かう”は最後の短編のタイトルでもあり、また全てのお話に姿を変え形を変えて登場するイタチの事でもあります。各話の主人公たちは人生の転換ともいえる出来事に遭遇するとき、このイタチの姿を必ず見るのです。さて怪異の前兆を目の当たりにして、これから先に待ち受ける未来は吉と出るか凶と出るか。行く先をただ見守るしかない私は、期待と不安が入り混じった興奮を静かに楽しむのですよ。
「異神千夜」「風天孔参り」「森の神、夢に還る」「金色の獣、彼方に向かう」、どれも面白かったですけど、やっぱりイタチのルークくんが来てくれるお話がイイかなー!イイなールークくんかわいいなぁー!未婚女性がペットを飼い始めたら婚期が遠退くという話がありますが、独身男性の場合はどうなんでしょうかね?え、もともと少ない確立から何を引いても大して変わらないって?はっはっは、そいつは勇気付けられる一言だ。