テレビドラマ 「テンペスト」 5話まで


池上永一氏原作、テレビドラマ版テンペストも折り返し地点。5話目の放送が終了です。(全10話)
上下巻に別れた原作の単行本で言うと、現時点でちょうど上巻の終わり辺り。多少の編集を加えながら、ほぼ小説版と同じペースでお話を消化していっているようですね。
さて、一難去ってまた一難、というか主人公の孫寧温(そんねいおん)には毎度の事ながら困難しか降り掛かって来ないのですが、難敵の聞得大君加那志(きこえおおきみがなし)第一形態を打ちのめした後に、休む事無く次なる刺客が襲い掛かります。テンペスト5話目はGACKTさん演じる本物の宦官、徐丁垓(じょていがい)が本格的に牙を剥きます。
仲間由紀恵さん演じる孫寧温は、王宮の面々が宦官を(たぶん)良く知らない事を狙って、性別を偽り男社会の政治の世界へと足を踏み入れました。消しようのない経歴詐称を常日頃隠しながらという、言わばいつ爆発するとも知れぬ爆弾を抱えながらの政治生活を強いられているのですが、その痛ーい弱点を嫌らしくも意識せざるを得なくさせるのが、本物の宦官である徐丁垓の登場です。
ここは是非とも穏便に、徐丁垓とは友好な関係を築いて有耶無耶のままお国にお帰り頂きたい所ですが、残念ながらこの本物の宦官、全力で孫寧温に襲い掛かってきます。とことん嫌らしいやつです。
原作者の池上永一氏の描くキャラクターは、悪役と言えどもどうも行動に天然ボケが入って笑いを取りに行く傾向が多いのですが、そんな中でも数少ない何処までもシリアスで居続ける悪役が徐丁垓です。「レキオス」のキャラダイン中佐、「シャングリ・ラ」のタルシャン等、少数ながらシリアスで居続けたキャラクターは、容赦のない敵役ぶりで主役たちの大きな障害として存在感を示して来ました。そういえば話は少しずれますが、キャラダイン中佐のもう一つの姿としてベッテルハイムなる人物がレキオスに出ていましたね。テンペストに出てくる陽気なベッテルハイムおじさんとはだいぶ印象が違いますが、同一人物かどうかまではよく分かりませんね。レキオスとテンペストを繋ぐカギはやはり北崎倫子が握っているのでしょう…
お話を戻しまして、徐丁垓も主役である孫寧温に対し、偽物の宦官である事をすぐさまに見抜いた後にそれを利用し、琉球王朝の奥深くへ取り入る事を目論見ます。
孫寧温というキャラクターは、類稀なる才能と最後には勝利するという強力なヒーロー素質があるのですが、池上作品には貴重な品の良さがあるせいでどうも相手に常識的な対応をしてしまう甘さがあります。そこが彼女の良さでもあるのですが、まだ対応が甘い初手を突いて手痛い一撃を的確に決めてきたのがこの徐丁垓です。やはり孫寧温、キッチリ最後には打ち倒すも、確実に深い傷を彼女に残して行きました。
我儘勝手な悪役ながらどうも天然ボケ気味の聞得大君加那志(真牛)と違い、とことん笑えない徐丁垓はまさに愛すべき要素のない、お話が用意した徹底的な悪役でしょう。ですので思いっきり「このケダモノ!」と毛嫌いしてやりましょう。このケダモノ!

ただ原作版より(役者のせいで)マイルドになってるなあと思ったドラマ版でしたとさ。