【浅暮三文】10センチの空

10センチの空 (徳間文庫)


帯に「全国の中学生に読まれている作品です!!」と紹介されているのを本屋で見つけました。どうやら中学校の国語の教科書にこのお話が載っているらしいですね。
この作者さんはメフィスト賞という賞を受賞してデビューをしているのですが、そんな人が国語の教科書に載ったんだというのが一目見たときの感想。そんな人って。いや、メフィスト賞を受賞してデビューした人って、アニメ「化物語」の原作者である西尾維新さんとか、石原新太郎都知事に「タイトルを見ただけでうんざりした」と批評されちゃうような舞城王太郎さんとかがいまして、とても個性的な方が多いという印象が個人的にあるのです。この作者のメフィストでのデビュー作「ダブ(エ)ストン街道」は、迷子の恋人に会えそうで会えない青年を主人公にしたとぼけたファンタジーでして、まあ面白かったですけど混沌としていました。
そんな感じでおいおいどんなお話を中学生に読ませる気ですかと興味津津な私なのでございます。
さて、では実際にはどんなお話であったかと言いますと、これがまあちょっとした夢があって未来に希望を持たせてくれるようなファンタジーなのでしたのよ。ちょっとした夢というのは、主人公が持つ10センチだけ空中に浮かべる能力の事です。あまり役には立たなそうだけど、出来るなら自分だって飛んでみたい!と正直思いますね。そして未来への希望と言うのは、自分の進路が分からない主人公君が昔の友人の思い出から進むべき道を見つけ出すという、成長の物語の事です。まだまだ将来の事なんて全然分からない中学2年生の気持ちを、きっと元気付けてくれると思う素敵なお話であるとも思いますね。



ちなみに20代の勤め人がこのお話を読みますと、終章で「なにリア充。爆発しろ!」と醜い嫉妬に悶えるようです。