【奈良美那】埋もれる

埋もれる (宝島社文庫)

『韓国人との恋愛を描いた官能ラブストーリー』 第3回日本ラブストーリー大賞大賞受賞作だい!
日本ラブストーリー大賞と言えば、第1回大賞受賞の「カフーを待ちわびて」がなかなかおもしろくて第2回大賞受賞の「守護天使」が気持ち良いくらいの真っ向勝負なお話で、まあ割と良いイメージがあったりする賞です。でも正直これは読むのに躊躇しまくりでした。リアルな心理描写と濃厚な官能シーンが推薦者のお薦めポイントらしいのですが…それだけじゃちょっと…つまらなそうじゃない? とりあえず買うだけ買って寝かせておいたのですが、この度見事に暇になったので読む事が出来ました。いやー読むタイミングというか機会がなかなか無かった。朝っぱらからエロエロなのを通勤とかで読むのはちょっとイヤン。

でもまあ『日本ラブストーリー大賞』ですからね、この賞に良く似合っていると言えば似合っているし、そもそも前の二つが大人しすぎたという気もしますしね。もう開き直って今夜のお共にするぐらいの気持ちで読んでしまうしかねえべ!グヘヘヘヘヘ。
とまあね、実際読んでみましたらね、これがびっくりするくらい登場人物に感情移入できないの。正直生きてて楽しいですかって思ったの。登場人物に無関心だとセクハラ描写もここまで心に響かないものなのねと勉強にもなったの。
このままでは残りのページが退屈なままで過ぎてしまうぜよ!と危ない雰囲気が漂ってきたので物語の見方を変えました。やれやれ、自堕落一直線の女性なんて見てても楽しくはならないです。でもまあ、少なくとも作者は自分の願望を入れていると思うんですよ。そんでまあ作者も不倫して男に溺れたいと、…ちょっとくらいはあるかもしれないけど、とにかく本気では思っちゃいないでしょう。私が注目したのはそのあと。彼女に浮気を告白された男の態度、これね!
まったく、やっぱり不倫は良心が咎めたかどうか知らないけれど、不倫発覚の修羅場を作るなんてドMな作者なんだから。いけない事をしていると分かっているから裏切ってしまった男からはしっかり罰してほしい、でもギリギリで心が折れないくらいの手加減もして欲しい、その辺の微妙なバランスで男の態度が書かれていると見た。即ちこれ、作者が望む理想の振られた男の態度ナリ!
そんな感じで作中の男性陣の態度は実に参考になりました。素直に怒りを表しても相手の思う壺のようですな、復讐したいならもっと違う方法を考えよう。途中から登場人物は全く無視して、その裏にどんな意図で書いていたのか想像しながら読んでいました。なかなかおもしろかったです。最後に主人公の女性が悲惨な死に方でもしたら、やっぱり作者も主人公が嫌いだったのねと思ったのですが、物語は幸せに終わったのでそうでもないらしい。なるほど。

はあ、でもこんな登場人物に一切の感情移入を諦めた読み方はもうしたくないね。