Out of My Mind

Out of My Mind


凄い久しぶりです英語の本のお時間です。
ちびちびと読み進めて投げ出してを繰り返してどのくらい時間が経ったかもう分からん…。とりあえず前回の洋書から6か月ぶりでしょうか。
本日はこちらのネイティブ向け児童書「Out of My Mind」よりお送りします。
昔よりだいぶ上手く洋書が読めるようになってきたとはいえ、やはり相当気合を入れないと読み切ることが出来ないのは相変わらずの私です。洋書やべぇよ…
とまぁそんなことは置いときましてこちらのお話ですが、少々体が不自由で言葉を発することが出来ない女の子が主人公の物語でございました。主人公のメロディさんは言葉を上手く発することが出来ないというか、生まれつきの脳性麻痺のせいで体中があんまり動かせずほぼ車いす生活を強いられています。この作中での脳性麻痺描写は詳細かつ苦労の連続ばかりでして、道中の雰囲気はかなりシリアスです。そんな気が重くなりそうな要素は十分にありながらも、メロディさんは11歳とまだ幼いとも言える年齢ながら芯のしっかりした意見と達観した価値観の持ち主のためなんというかとってもハードボイルド。自由に発することが出来ない言葉の奥では、普通の人と何一つ変わらない悩みや憤りをメロディさんだって持っているんです。でもちゃんと喋れないだけで周りの人たちの目は確実に違ってくる、そのもどかしさと現実をとても印象付けられるお話となっておりました。
作中ではメロディさんの心情や意見なんかが実に饒舌に本人より語られるため読者的には受け入れやすいのですが、傍から見ると"あーうー"だったり奇声を発したりしか出来ないので一般人と何ら変わらない考えを持っているとは周りの人は気付きません。というか正直気付くの無理だろってレベル。この辺の雰囲気の描写は物凄いバランス感覚を維持して進むため、かなりお話に引き込まれました。メロディさんを介護する側の人から見れば突然蹴ったり叫んだり暴れだすやっかいな障碍者なのに、メロディさんの心の中から見るとどうして周りにこの気持ちを伝えられないんだ、どうしてこの体は思い通りに動いてくれないんだという爆発しそうな気持が痛いほど良く分かるようになっているのです。
テーマがテーマだけに暗いお話になりがちですが、その代わりと言っては何ですが他の登場人物たちに極悪人は登場しませんので不必要に暗い雰囲気にはなりません。ただし逆に全てを理解してくれる天使のような人間ばかりでもありません。メロディさんはどう頑張っても人に手助けしてもらわないと生活出来ませんが、同時に様々な偏見とも関わっていかなくてはならないのです。そしてこのお話の面白いところは、たとえ喋れなくてもメロディさんの心の中は実は普通の人より優れているフシがあるところなんですね。自分より下に見ていた人間が、実は自分よりいっぱい物事を考えていて頭も良かった…そう気付いたときに露になる様々な人間の本性が行く先々で待っております。
だいたい本の真ん中くらいからでしょうか、メロディさんが手入力で喋る機械を手に入れて長い言葉を伝えられるようになるのは。
このお話で私の心にグッと来た展開は、喋る機械を使って学校のクラスメイトと最終的に友達になるんじゃなくて、一般クラスの全員と真正面から喧嘩する場面を締めに持ってきたところでしょうか。凄いですよハッピーエンドじゃなくてビターなハードボイルドな締めですよ。クラスメイトの子供たちは知恵遅れと見下していたメロディさんに思いがけない正論で攻め立てられ、誰一人として言い負かすことが出来ないのです。おそらくクラスメイトのメロディさんに対する心象は最悪になったと思いますが、逆に取るに足らない相手だと思っていた人間にはっきりと敵対心も抱いたことでしょう。たぶんメロディさんだったら、手も足も満足に動かない人間に本気で怒っているわこいつら!ってな感じで笑い飛ばしそうです。マイナス方向にぶっ飛んでいますが、ある意味偏見による遠慮もない対等な関係になったメロディさんとクラスメイト達に思わずニヤリとしたラストでした。