リテイク・シックスティーン

リテイク・シックスティーン (幻冬舎文庫)


何年も生きていれば人生をやり直したいと思う瞬間が、今までに少なからずあったはず。さぁて戻ったら何をしましょうかね?
人間誰しもが思ったことのある題材に、今回は豊島ミホさんが挑むようです。個人的に作風が好きでちょこちょこ読んでる作家さん。作者さんがフィクションの力を借りて、やり直したいことをどう描くのかちょっと気になるこの一冊。
本日はコチラ「リテイク・シックスティーン」よりお送りしていきます。
タイトルに書いてある通りお話は高校一年生の16歳から人生のやり直しになり、舞台は入学したての高校生活から始まります。ただし戻って来たのは主人公さんの友人。友人から突然「未来から来た」と告白されて、未来と現在の交錯が明らかにされます。そしてそれが全てでもあります。主人公の沙織と読者はあくまで現在の時間で生きる人間であり、やり直しも何も、一回目の(そしてたぶん一回きりの)人生を送っていきます。未来から来たという孝子の言葉を信じるも良し、信じないも良し。隣で人生をやり直しているらしい人物を眺めながら自分の人生を迷い迷って歩み続ける、そんなスタンスでこのお話は展開していきます。結構現実的な線で進んでいきます。
しかしまぁ、「人生をやり直す機会があるんだけどどうする?」と聞かれればもちろんYESと答えますが、いろいろ悩んで辿り着いた今の自分はそんなに嫌いじゃないワタクシです。今と昔、どっちが楽しい?という問いかけはまた別問題でこっちは即答はムリ。けれどこのお話の孝子さんは、おそらく昔の方が楽しかったと考え、現在を捨てて過去へとやってきています。孝子さんは大学を卒業後、バイトを少ししながら結局は無職で27歳を迎えてしまったそうなのです。27歳職歴無し、これは実際どうすれば良いのか難しいシチュエーションですね。実際どうしたかといえば無職転生したわけですが、確かに高校生活からやり直せれば挽回できそうですね。かなーり贅沢な挽回方法ですけど。
27歳という年齢はちょっと辺りを見渡すと、この作品が出版された2009年の作者さんの年齢と一緒なんですね(下世話な話ですが)。物語の登場人物の動きは少なからず作者の心情が反映されているものだと思っていますが、孝子さんの境遇はもうこれ作者さんの本音そのままでいいんじゃねぇか?と思わなくもないキャラかぶりです。ちなみにこの本を読んでいる現在の私も27歳でして、3人の奇妙な27歳グループが出来上がってしまいました。もうね、私も仲良く未来からやり直し側でお話を楽しむことにします。
そう考えると孝子さん、アンタのやることなす事ヤバ過ぎぃ!犯罪過ぎぃ!だって俺だったら高校に戻ってクラスメイトの女の子と仲良くしちゃうってことですよ?相手は女子校生ですよ?女子校生ですよ?通学途中の女子校生を見かけることがありますが、あの子たちの中に俺がいるの?実際に仲良くできるかどうかは置いといて、クラスの中に大の大人がいるだけで物凄いダメ人間な雰囲気が漂っていますよ。孝子…お前がどんなに清く正しい学生生活を心がけようとも、同年代の俺の目は誤魔化せないぜ…。沙織さんの水着姿、俺も見たかった…。
個人的には16歳なんてまだ何にもできない無力なお年頃だと思っています。今日より明日。去年の自分はダメ人間でも、今年の自分はちょっとだけマシになった!そう思いながら生きていきたいですね。