偉大なる、しゅららぼん

偉大なる、しゅららぼん (集英社文庫)



わけの分からんタイトルセンスが今回も光る、万城目学さんの「偉大なる、しゅららぼん
しゅらららららーってなってぼぼぼぼぼんっとなるから合わせてしゅららぼんとの説明が作中でされますが、まぁなんのこっちゃですね。高校入学を機に琵琶湖の近くにある街にやってきた主人公くんが経験する、不思議な力をもった親族やクラスメイトの奇人変人を巻き込んだ大騒動をコミカルに描く青春劇。深刻なんだか笑えるんだか分からない事態に登場人物たちと一緒に振り回されながら、楽しい道中を過ごしました。
なんだか知らんが作者さんの作品は実写化される機会が多く、こちらの作品も今年の3月から映画が公開されるようですね。
さてお話ですが、こちらの本の前に出た「かのこちゃんとマドレーヌ夫人」がだいぶ落ち着いた上品な作品に仕上がっていたのとは対照的に、デビュー作の「鴨川ホルモー」路線に戻ってきてくれたかのような無茶と阿呆な人物が暴れまわる感じの展開で賑やかに進んでいきます。琵琶湖の近くで暮らしている日出家には人を操る超能力が備わっていまして、その力で巨万の富を築いた日出家の末端に位置する主人公の涼介くんは、しきたりに従って高校入学を機に本家で訓練を受けることになります。年々能力を持った人間が減っていく中、涼介くんと一緒に高校と訓練に通うことになるのは日出家本家跡取り淡十朗くんただ一人。地元の御殿様として持て囃されてきた人間がまともな感覚を持っているはずがありません。学校一目立つ男の"お供"として、涼介くんは友達に恋についでに持ってる変な能力にさんざん振り回されることになります。そして現れる日出家の長年の宿敵、似た超能力を持つ棗家からやってきたイケメンクラスメイトの存在。はてさて一応普通の中学生として暮らしていけていた涼介のネクストステージ(高校生活)は早くも雲行きが怪しくなってきました。この先お話はいったいどうなっちゃうの?という感じでこれから展開していきます。
全体的にコメディチックでボケにツッコミ両方兼任するのが主人公の涼介くん。お話も無駄(←素晴らしいことです)に壮大になって超大金持ちが一族存亡の危機にまで陥ります。笑いあり涙ありで面白かったのではありますが、すこーし、なんだかなー、物足りなかった部分もあると言えばあるんだよなー!
まず超能力!能力を利用した一族の歴史的背景や面白い効能なんかが非常にワクワクするのですが、見せ場がなんか地味!
次に恋模様!何か起こりそうなきっかけはあっておやおや〜?と思うことはあるんですが、主人公くんは完全に蚊帳の外!ついでに他のキャラもたいして見せ場なし!
そして友情!一般人の涼介くんと、ナチュラル殿様の日出家長男、あと一族の長年のライバル棗家の長男と歪な3人が上手く協力し合って前に進んでいく姿は胸が熱くなりますが、今一つ物足りねぇ!もうちょっとなんか欲しい!
面白いよ!でもこれだけ分厚い(600ページ弱)のにどうして少し物足りなく感じるのか分かりませんが、こう、もうちょっと何か欲しかったというのが正直な感想!