【いしいしんじ】東京夜話

東京夜話 (新潮文庫)


好きな本ぼしゅう 3月のNさんのいっぱい紹介もこれで終わり。その時のコメントも最後に掲載じゃぁ!

>ほかの感想も見ていたら栗田有起さんの「マルコの夢」があがっていて、テンションあがったので勢いでオススメ。ご存知のものがあったらスミマセン。
個人的超勝手な「マルコの夢」つながり本:いしいしんじは全般的にだけどとりあえず短篇集で「雪屋のロッスさん」「東京夜話」、児童書系で斉藤洋「ドローセルマイアーの人形劇場」(斉藤さんは「ルドルフとイッパイアッテナ」のシリーズもオススメ)、あといまふと思い出した小川みなみ「やわらかな記号」。何で「マルコの夢」つながりなのかはきかないで。私もよくわかりません。いちばんナナメ方向なのは「やわらかな記号」かな。
通りすがりのくせに勝手なコメントですみません。いしいしんじ以外は図書館利用になるかもです。
というわけで、「雪屋のロッスさん」「ドローセルマイアーの人形劇場」(ついでにルドルフとイッパイアッテナ)「やわらかな記号」、そして今回の「東京夜話」で計5冊終了です。最初はどの一冊を読もうかなーなんて考えていましたけど、だんだん選ぶのが面倒になってきたんで全部読めばいいやーって全部読みました。べ、別に暇だったわけじゃないんだからね!ほんとだからね!
さて「東京夜話」です。
少し前に「雪屋のロッスさん」も読みましたが、私が他のいしいしんじさんの本(トリツカレ男、麦ふみクーツェ)を読んで感じていたものは、この人の書くお話は大人が子供にやさしく語りかけるようなおとぎ話みたいになるんだなという印象でした。だもんでこの本読んでびっくらこいたんですよ。今まで読んだ本より初期に刊行された本ですが、まったく予想していなかったいしいしんじさんがそこにいました。
内容は東京の各地の様子をぶらり散歩するように綴る、フィクションのようなノンフィクションもだいぶ混じっているような短編集です。そして大いに理不尽。ごみ回収業者に密着する取材記事風の話かと思えば、その他全部の風景は普通なのにごみをそのまま人間に置き換えて、何の比喩だか暗喩だかわからんような話の展開をしだします。築地の話の時には、立派なマグロとサケを見たぐらいの体験はしているかもしれませんが、話の中にはマグロとサケの壮大な人生と愛の記録が挟まれていたり。(もうね、そこはフィクション以外の何者でもないよね)
数々のお話に出てくる作者さん自身がモデルだと思われる主人公さんたちは、そりゃもう陽気で酒も飲む飲む、若干ガラも悪くてとんでもない暴言をサラリと言うなど、今までの優しいイメージを一掃するインパクト。著者近影の写真をみて「丸っこくて柔らかそうな人だなぁ」と思っていたのに、今見ると「腹の底では何を考えているか分からん…!その笑顔が恐ろしい!」と印象ががらりと変わるから面白いものです。私は断然、今回の黒いいしいしんじさんの方が好きですね。切れ味鋭くジョークを飛ばし、面白く人を皮肉る、すごいなぁ面白いなぁとなんだか感動です。しかし全編に渡って飲んだくれてんなこの主人公!
私だっていしいしんじさんが優しげなお話ばかりじゃなくて、たまにはホラーや残酷なお話くらいは書くだろうなくらいは思っていましたよ。でもここまで下世話な、ある意味お下品なお話を書けるなんて全然予想していませんでした。ハハー、大変な失礼、お許し願います〜。でもこっちの作風の方が本性だよね。きっと。
いやいや、自分の偏見に新たな視点が加わるって、面白い体験出来ましたわぁ。個人的印象で、この本が一番マルコの夢(というか栗田有起さん)に一番近い感じがしましたね。