【法条遥】リビジョン

リビジョン (ハヤカワ文庫JA)


好きな本 ぼしゅうのコメントより。
>こんにちは。法条遥さんの『リライト』『リアクト』『リビジョン』『リライブ』の全四作をオススメさせていただきます。四作はすべて”時”に関するお話で、『リライト』は、いわゆるタイムリープものです。四作の内容を端的に表したものが、amazonのあらすじ欄に書いてあったのでコピペします。
『未来へ跳んだ夏(リライト)、過去を変えた秋(リビジョン)、時に挑んだ冬(リアクト)。すべての出来事は、この完璧な春(リライブ)のために』
ちなみに『リライブ』が最後になり、こちらはついこの間でたばかりなので、実はまだ読んではいないのですが・・・きっと面白いです(見切り発車)。難解なのでついていくのが大変なのですが、夢中になって読みました(リライブ以外は)。クリハラさんの感想を楽しみにしています。そして私はそれまでに『リライブ』を読みます。


おすすめありがとうございます。その2
前回は「リライト」を読みましたので、その続きの「リビジョン」を読んでみることにします。これらは時間を題材にした作品なんで、ちょこっと調べるとタイムトラベルもののSFも一緒に見つけたりするんですよね。ケン・グリムウッドのリプレイとか時間を繰り返すSFの有名所ですけど、昔読んだなぁと懐かしい気持ちに浸ったり。そんなどうでもいい話。
本日はコチラ「リビジョン」よりお送りします。
じゃぁさっそくネタバレありで続きを書くからな!未読の人は進んじゃだめだぞ!
ドキドキワクワクを大事にしたいなら、お兄さんの約束をちゃんと守るんだぞ!










<〜ここから〜>
今回のお話は1992年の秋から開始となります。前作の「リライト」が1992年の夏だったので、これは前作のすぐ後の話という事になりますね。なんだよ前作バットエンドだったじゃんとは思うものの、主人公は全く新しい人になりましたのでお話も心機一転の再スタートという運びでございます。
今回の主人公は、最近赤ん坊を生んだばかりのまだまだ新米お母さんです。彼女の赤ちゃんがいきなり死にかけていて病院に担ぎ込まれるんですが、不安に駆られたお母さんは懐から手鏡を取り出して何やらごそごそとやりはじめます。これが今回のキーアイテム、未来を見通す手鏡なんですね。テクマクマヤコン、テクマクマヤコン、息子の病状はどうなるのー?と鏡に問いかければあら不思議、術後の容体がすぐに分かるというわけです。もちろん容体が分かるだけで、未来で死んでる姿が見えたらそのまま赤ちゃんは死にます。理屈じゃねぇ!理屈じゃねぇんだ!未来がどうだろうと、我が子の安否が気になるものは気になるんだ!分かるぞぉ!
そんな感じで一族に代々伝わる秘伝の手鏡を使い未来を見通そうとしたところ、何故かそこには十年前の、まだ制服を着ていた頃の自分が写っていたのです。へー、手鏡本物じゃん凄いじゃんとのんきにしていた私とは裏腹に、何故かビビりまくる新米お母さん。彼女が言うには、今まで未来が見えたことはあっても過去が見えたことは一度もなかったというのです。さらに鏡の中の自分が語りかけてくるので2度びっくり。鏡の中の自分から見れば、未来の自分が「あんた、私が未来視したただの幻想じゃないの?」といってくるのでこっちもびっくり。いやいや、あたしから見れば老けてるお前の方が幻想だっつーのと、何やら意見の食い違いが生じています。この綻びがやがて大きな事件に発展するというわけですね。
というわけで今回の時間跳躍方法は、未来視となります。ややこしいのが未来の自分に語りかけるだけじゃなくて、過去の自分から語りかけられることもあるというい事です。ひとまず赤ん坊である息子の危機は回避されたのですが、後日病院を再び訪ねると何故か誰も昨日の出来事を覚えていなくて不審者扱いしてくるのです。何やら混乱しながら帰宅すると、今度は夫が「俺の事を会社の人が誰も知らないんだけど…」と同様に不審者扱いされて帰ってきました。何かが起こっています。
まぁぶっちゃけ何が起こっているのかというと、過去の自分が手鏡を使って未来を変えていたからなのです。「キー!なにしてくれんのよあの女!!」と息子の存在を消されそうになって怒る新米お母さん。すかさず手鏡を使って過去の自分に喧嘩を売って未来を元に戻そうとします。また別の機会では、未来の自分は何やら悟った様子で手鏡を捨てろと言ってくる始末。敵は未来の自分と過去の自分だ!
(; ゚Д゚) 今ココに、最高に醜い自分同士の争いが始まる…!!
同じ自分とのコミュニケーションなのに、過去と現在と未来のそれぞれで全然話が通じなくて罵り合う主人公達。結婚した旦那も違うというパラドックスも起こっているので、「あたしの旦那を奪わせはしない!」と過去の自分に殴り込みに行って激闘の末に自分の現在を正しいものにしようと勝利を勝ち取る主人公さん。敗北した過去の自分は「馬鹿な…」と呟きながら無理やり違う旦那ルートへと進まされるのです。最高に頭が悪くて笑ってしまいました。
この作者さんは女性が嫌いなんじゃなかろうか?と思うほど、自分同士で熱戦を繰り広げる主人公さんたちは協力し合う事をしません。右手と左手で喧嘩をしている人を眺めている気分です。なんてぇ不毛な争いなんだ!
この、過去の自分と未来の自分同士の歴史改変バトルで酷使される手鏡も大概なものでして、未来を見るだけかと思いきやお互いの望みを叶えようと歴史をガンガン修正していくスーパーパワーを発揮しちゃいます。お話の始まりは1992年の秋だったのに過去を変えちゃうものだから、1992年の夏に「リライト」の別件でタイムパラドックスを起こしていた前作の主人公も思いっきり巻き込まれていて、前作を読んだ範囲から知らない所で死にかけるハメになる始末!逆に前作でイケメン主人公が引き起こしたタイムパラドックスを鏡が見つけちゃって「なんだこれ、頑張って辻褄合わせないと!」と更なるハッスルをする始末!もはや訳が分かりません!ただ最後は良い話っぽく終わります。
最後まで読み終わった私は本をそっと閉じて思い出に浸ります。どうだい?良いお終いだったろう?
「いや、やっぱり無茶だよコレ!」