卵町

([く]4-1)卵町 (ポプラ文庫)



手に汗握る冒険も、あっと驚くようなサスペンスもなくても良いじゃない…。
ただただ現実世界で疲れた心に、静かな雰囲気のお話が心に染み入ります。お話の中の優しさが眩しい…。
本日はこちら「卵町」を読みましたのよ。
母親が病気で亡くなる間際、かつて自分が暮らした町のある人に死んだことを伝えて欲しいと頼まれる娘。母の願いを叶えるため、なんとなく続けていた仕事を辞め(←超羨ましい)、この卵町へとやってくることになります。医療施設が密集する卵町では患者や家族に配慮をした政策が執られ、車の往来や繁華街などは町の外にしかありません。人生の最後を過ごす人たちの多いこの町独特の静けさの中で、主人公のサナは当てもなく母の思い出の人を探し始めるのでした。という感じの始まりです。
家族の知られざる一面を探るというミステリー的面白さをエッセンスに加えつつ、主人公のサナが人生に迷いながらたまたま出会う人々からいろんな事を気付かされる過程がこのお話の醍醐味ですね。声を荒げる事無く淡々と語られる文章がなんとも落ち着きます。おっちゃん、静かで居心地良すぎてなんだか涙が出てくらぁ…
作者の栗田有起さんはたまにシュールすぎるギャグをかましてくる事があるんですが、このお話では終始大人しい様子を保っておられました。まぁ、このお話にギャグは似合いませんからね。でも私はこの作者さんの笑いのファンだったりします。