ディバースワールズ・クライシス

ディバースワールズ・クライシス (MF文庫J)


今日もライトノベルでムチャをする。もうあらすじすら読んだりしない。Amazon電子書籍で最近出たやつをテキトーに選ぶ。
「ディバースワールズ・クライシス、よし今日はこれにしよう!」。面白いかどうかも分からなくて時間を無駄にするかもしれない本を読む。ゆとりが出来た休日に相応しい、最高に贅沢な時間の使い方だ。Amazonの検索機能がバグってるせいか良く見たら全然新しいやつではなかったが、それもまた一興かなと思った。Amazonにはコノヤロウと思った。
お話は少女といえる年齢の勇者が、魔物を右へ左へと殺戮する場面から始まる。実力者らしく魔物たちを圧倒しているなと見ていたが、ボスっぽいキャラからあっさり被弾し殺されかけたところを通りすがりのイケメンに助けられていた。女の子のピンチにイケメンが颯爽と助けに来る、非常にオーソドックスな展開である。剣の実力もなく女の子にもてるわけでもない私にとってイケメンは敵である。共感できる要素はいまのところ0だ。「なによあの勇者の女。か弱い女ぶって男に色目をつかっちゃって!キィー!」。(どうやらイケメンが女にばかり優しいのが気に入らないようだ。)(…え?)
この世界では人間と魔物は争い合い、勇者と呼ばれる人間が魔王と呼ばれる存在を倒す旅を行っているらしい。お話の主人公はその勇者と呼ばれる女の子と、冒頭で旅に加わったイケメンの男の子二人だ。二人が旅先の街に着くとその土地の偉い人たちが出てきて旅のサポートをしてくれる。人類の危機に相応しく、人々は協力し合い打倒魔王軍へ向けて各地で動いている様子が感じられた。中でも先陣を切って魔王討伐に向かう勇者は皆の希望の印だ。厚遇は住民たちの魔王に対する不安の裏返しでもある。ありがたく厚意を頂戴すると共に、この戦争を一刻も早く終わらすことを胸に誓おう。明日もまた戦いが待っている。
しかし街の人々の好意に、私は言い知れぬ不安も感じていた。親切なのはありがたい。だがどこに旅人を「ようこそ、カスケードへ!」と出迎えてくれる陽気な住民がいるのだろう。どこに「へいらっしゃい!そこのかわいいお嬢ちゃん!」「ばっかあんた。子供に酒なんて勧めるんじゃないよ!」と突然コントを始める店の夫婦がいるのだろう。ここの住民は適当に話しかけたら「最近王様の様子がおかしいんだ。なにかあったのかな?」とか「へっへっへ…街外れにある井戸の底には実はな…、おっとこれ以上言えねぇ」とかぶつぶつ独り言でもいいそうな気配がしてくる。これは小説の会話ではない、まるでゲームシナリオの中での会話のようだ。そう言えば魔物との戦いでも、倒すと魔力が霧状に放出されて手元の魔石で集める作業を行っていた。そうすることで戦力も増していくらしい。モンスターを倒して経験値を集めて、ビジュアル的にも派手で画面映えがしそうだと感じた。まさかこれは…このちょっとチープなゲームシナリオっぽさは伏線に違いない。私は確信した。確信したが、実を言うと別に伏線でも何でもなかった。「それじゃぁ残ったのはゲームシナリオっぽさだけじゃないか!」私は涙した。
勇者とお供のイケメン、二人の旅路は危機の連続である。自分の軍をほっといて突っ込んでくるアクティブな魔王のせいで、雑魚なら無双出来る勇者といえども苦戦は免れない。ちなみに魔王が単身で突っ込んでくるのは仲間の魔物たちを危険な目に遭わせたくないからという涙を誘う理由からで、こんな上司がいたら魔物どころか私だって最前線に赴いて力になりたいと願うだろう。魔物と一人のサラリーマンの心に今、通じ合うものが生まれた。義は魔王軍に有り、である。
対して勇者の女の子の力の源はイケメンとのキャッキャウフフである。マジか。マジだった。愛は何よりも強かった。
割と最初の頃から魔物を切り殺している脇でイケメンをちらちら意識していたのだが、話の流れで勇者の女の子の秘密が明らかになった際、精神が不安定になってからが本番だった。一度キスの味を覚えたら、事あるごとにキスを要求してくる。例えば今の戦闘が片付いたらキス、例えば会話が途切れて気まずくなったらキス。「ありかなしかで言えば、大ありです!」。きっと別れ話にでもなろうものなら体を張って止めに(性的な意味で)来るか、刺し殺しにでも来るに違いない。男ならここは刺される前に挿し返してやれ!勇者の不安で脆くなっている心情がよく分かる描写であると思う。
「プレイしたゲームのお話がこれだったらありかもしれん!当方R18指定でも法律的に問題なく対応出来る準備があります!」
でもストーリーはもう読んじゃったから、たぶんやらない。