薔薇のマリア 20

薔薇のマリア20 .I love you.[noir] (角川スニーカー文庫)


小説にして20巻…、長い長いお話となった薔薇のマリアさんも前回"次巻で終わり"宣言がされました。その"次巻"に当たる20巻目がこちらの本でございます。
そんな感じでこんにちは。「薔薇のマリア 20 I love you.[nor]」よりお送りしていきます。
いやはや、長年親しんだ作品が終わるのはなんだか感慨深いですなぁと思いつつ店頭で実物を手に取ったときの印象は「なんだか薄い」です。…別にこのくらいの分量の作品は普通で珍しくも無いのですが、最終巻だからいつも分厚めのマリアさんがさらに迫力ある感じになってるんじゃなかろうかと詰め込まれたサイズを予想していたのですが、それに比べるとなんともあっけなく思えました。そして良く見ると帯の広告には2ヶ月連続刊行となにやら書かれているような気が…って終わるといっておきながら来月もう一冊追加かーい!
もうちょっとだけ続くよ薔薇のマリアさん。お話は進むとか進まないとかそういうレベルじゃなくて、本能の赴くままにシャウトシャウトの連続ですぜぅおぉぉぉぉぉぉらああああぁぁあぁぁ!至る所でちょりゃぁぁぁぁぁぁ!もうなにがなんだか全然分かりません!
それでも確実に近づいている様子は分かる夢の終わり。薔薇のマリアの世界は今まで現実世界じゃ見たことも無いような怪物や魔法が飛び交うファンタジーな世界でしたが、とうとう今回初めて、2000年といった見慣れた西暦や、Tokyoなどの聞いたことのある地名がはっきりと本文中に示されました。以前からエスカレーターだとかエレベーターとかなんとか、世界観にそぐわない(作中の世界には存在しない設定の)物の名前がギャグか本気か分からないようなあやふやな感じで使われていまして、それらしき事を匂わせることは匂わせていたんですよね。マリアさんの世界が私たちの世界と続いていたなんて、それなんて胸熱…。しかしファンタジーの大敵である現実と繋がってしまうと、魔術師の使う魔法や異形の魔物たちにどうしても理屈が付きまとい、ミステリアスさが根こそぎ剥ぎ取られてしまう危機に陥ってしまいます。おもちゃ箱をひっくり返したように何でも自由に出来た夢の世界は、現実世界との距離が近づいたことで「科学」や「技術」に無理やり当てはめられてしまうのでしょうか。いつかはそんな時間がやってくるとは思っていましたが、それが訪れる可能性があるのは見事に残す最終巻のみ。今までの薔薇のマリアの世界が激変してしまい崩壊してしまっても、次で最後なんだからもうどうとでもなっちゃってもある意味OKだ。
意地と根性だけで読み進められるほどこの20冊の分量は少なくありません。作品の文章だけ見ると何が面白いんだか分かりませんが、なんだか読んじゃう不思議な魅力がある薔薇のマリアさん。いや、違う。マリアさんだ。散々ひっぱったマリアさんの秘密にどういったオチを作者さんが用意しているのか、ただそれだけのためにここまで付き合ったと言ってもいいです。あっと驚く秘密が明かされようが、がっかりしようが、残すは最終巻のみですね。