貴族探偵 (1日目)

貴族探偵 (集英社文庫)



ミステリー作品というものは概してトリックにはとことん矛盾のないフェアプレーを心掛けますが、登場人物が面白いように死んでいくことに関しては矛盾もへったくれもこまけぇこたぁいいんだよ!とばかりにこっちは適当な事になっているのが多いものです。今では私も「ハイハイお約束お約束」と大人の対応が出来ますが、まだまだお子様だったころには「こんな適当なやつら死んでもやる気でーん!」と一人でぶーたれていたものです。犯人がさっぱり分からないのは関係ないよ。(ホントだよ)
そんなひねくれものの我が儘も、生半可じゃないマジモンのひねくれものの前にはゴミ屑同前。作者の麻耶雄嵩さんが送り出す作品はどれもこれも読む者を混乱の渦へと叩き込みますが、本日読んでいるこちらの「貴族探偵」もその例に漏れずなかなかのキワモノぶりを見せてくれています。
というわけで今日の本は「貴族探偵」。
もうタイトルでだいたい分かるような気がしますが、山荘で殺人事件が起きたー、警察来たー、犯人どいつだーってやっているうちに出てくる探偵がやたらと貴族っぽいキャラをしています。ビシッと決めたスーツ姿でメイドか執事を連れてやってきて、現場にいる警察に対しては上司からの圧力をかけて黙らせるという、なんかもういろいろとお約束みたいな行動を取り敢えず全力でやります。そんで周りに対しては「これだから君たち庶民は困る…」みたいな態度。
ではお約束が終わった後は捜査のお手並み拝見とばかりに先を読み進めますと、貴族探偵の優雅な話術で容疑者候補の女性たちを口説きつつ、お付きのメイドか執事に事情聴取を指示。事件の謎が解けたところでお約束の関係者一同を集めての場をセッティングし、ここでお付きのメイドか執事に推理を披露することを指示。そして事件の全貌が明らかになり驚きの真相が暴かれる…となるのですが、スゲェ…あまりの自信満々な態度に見とれてたけど貴族探偵何もやってねぇ…。ヘッヘッヘ…あっしみたいな庶民がこんなことを思うのは失礼と存じますがね、貴族探偵様は本当に事件の謎が解けているんでして?いやいやいや疑うわけじゃございぁせんが、いつも解いているのはお付きの人ですよね?ヘッヘッヘ…(チラッ、チラッ
ちなみに事件のトリック自体は半端ない本格のガチです。この作者さんはいつもそうです。ぜんぜんわかんねぇ…