MEMORY

MEMORY (集英社文庫)


書店で実際にこの本が並べられているところを見ましたが、他に「MOMENT」とか「WILL」とかいった本と一緒になっていてずいぶん紛らわしい印象を受けます。1とか2とか付けとかないと分かりにくいよなーと思いつつ、もしかして?と思ったそこのアナタの考え通り、このMEMORYは続き物の3冊目となっています。一応この巻からの人でも楽しめるような作りにはなっていますが、そんな安っぽい慰めなんてアタイはしない!MOMENT、WILL、MEMORYの中から1冊目のMOMENTを選べなかった自分の審美眼を後悔するのよ!
あまり続き物を書くというイメージがない作者さんなのですが、神田さんと森野さんの幼馴染コンビがよっぽど気に入っているのかまたまたあのお二人さんかい?といったお馴染みっぽいお話が始まります。物静かな文房具屋の息子と、男勝りな葬儀屋の娘の淡い恋模様にキャーキャー言うのも一興ですが、いったん結末の付いた物語を繰り返す事については少々気乗りしない部分があるのも事実。えーだって2冊目でとうとう未来の旦那が迎えに来て人生の勝者になったじゃんか。いまさら学生時代の思い出や独身時代の擦れ違いを見せられても、もはやそんなものは不要、無用、必要無し!成就したんならもういいじゃないかとモテない人間の泣き声だけがこだまします。私がこの作者さんを好きなところに、登場人物は辛い時期でも大人のヨ・ユ・ウを見せてくれる前向きな人物が多い事にあります。伸るか反るかの大勝負の時に、怖気づかず冗談の一つでも飛ばしてくれるのは頼もしいですよね。でも(登場人物は知らないとはいえ)最後に勝利するのが分かっていて余裕を見せるのは完全に舐めプレイですよね。クソァ!醜いのはアタシね!知ってる!
お話の方は連作短編集となっていまして、神田さんと森野さんの二人はあくまで通りすがりA,Bみたいな感じで短編ごとの主人公たちと関わりあいます。その分5つのお話はバラエティ豊か。美少女ボクっ子登場あざとうございます。ありがとうございました。ちょこっとミステリー仕立てでどれも先に気になる展開があるお話です。ただし神田さんと森野さんは除く。「ウフフ、この小説、ミステリーとしては2流ね。だって二人の行く末にミステリーは存在しないもの!」 (ゴメン、ちょっと言ってみたかったの)