at Home

at Home (角川文庫)


本屋さんで見かけたとき「ウホッ!マジかー!(*>∀<*)!」って咄嗟に手が出る程度に好きな作家さんの本です。たまたま一緒にいた知人がそんな私を見て「どんな話?」って聞いてきたので知らんって返しておきました。常識的に考えて読んでもいないのに分かるわけないでしょ! え、それじゃあ面白いかどうかも分からないんじゃないかって? お前…常識的に考えて読まなくても面白いのは分かるだろ!(恋は盲目)
本日はコチラ、本多孝好さんの「at Home」よりお送りします。
表題のat Homeとは本書に4つ入っているお話の内の一つのタイトルなのですが、実際の所は4つともそのタイトルに相応しいんじゃないかと思われる、家族の愛や絆に関するお話の短編集です。4つのお話には4つのメインとなる家族が出てきますが、共通するのはどれも問題というか歪な部分を抱えていまして、そしてどれもがそんな逆境にも負けずに思いっきり笑顔になれるような素敵な絆で結びついているという所です。
もうね、一つ読み終わると思いっきり笑顔で。゚(゚´Д`゚)゚。ウワァーン!ですよ。どうして楽しいのに涙が出てるの私?って感じですよ。
そんで次のお話を読んでまた笑顔になって。゚(゚´Д`゚)゚。ウワァーン!ですよ。傍目には嬉しいのか悲しいのかどっちなのかはっきりセイ!って感じですよ。でもね、涙ってね、悲しくなくても出るものなのよ坊や。(満面の笑みで)
以下簡単に4つのお話の内容を。
「at Home」…父親と母親、高校生くらいの兄、中学生の妹、小学生の弟の5人家族のお話ですが、仲は良くてもみんな何やら訳ありの様子。今日の仕事の成果を話す父親も、成果に駄目出しをする兄も、傍から会話を聞いているとふと普通じゃない違和感を感じます。引きこもってる弟はなんとなく分かる、やたらと家事洗濯を担当している妹もまぁそういう家庭の事情なんだと分かる。でもお母さんからまた漂ってくる犯罪臭…。この家族、実は家族じゃありません。歪な家庭ですが、その絆は本物以上。不思議な縁の、苦難と愛情のお話です。
「日曜日のヤドカリ」…十歳の女の子、弥生さんと、再婚して弥生さんの父親になった"お父さん"のお話。弥生さんは小学生なんですが、大人びているというか最早年寄りじみた丁寧な物腰で、思わず「さん」付けしてしまうような良いキャラクターをしています。親子の会話も敬語を使ってやり取りをする余所余所しさがありますが、何故かしっかり親子が出来ていてギャップが笑いを誘います。「お父さん」「なんですか弥生さん」。こんな弥生さんが世の中の不条理に向かって、畳んだ肘でアッパーカットをぶちかます青春劇です。
リバイバル」…主人公は50を過ぎたバイトのおじさんで、その借金取りのヤクザとのお話。別にバイオレンスな事になっている訳じゃなくて、むしろ払い過ぎなくらい律儀に借金を返済し続けるおじさんに、ヤクザが条件付きの取り立ての終了を提案してきます。期限は1年間、見ず知らずの外国人女性と籍を入れて暮らす事。不法滞在者が国籍入手の為にやるようなよく聞く話ですが、無理やりここに一つの夫婦が誕生したわけですね。おじさんのちょっと悲しい過去も交えつつ、ただ静かに物事はなるようにしかなりません。(ノД`)もうね、トーチャンカーチャン俺生きるよ。哀しい顔なんかさせんよってしみじみ思う。
「共犯者たち」…とっくに成人してそれぞれ所帯を持った兄と妹、それと母親と昔いなくなった父親をメインに据えたお話。一度分裂してしまった家族ですが、妹の家庭のピンチに本気で怒鳴り込んで道を切り開く父親、事情をまとめ上げ奔走する兄、男どものだらしないピンチに「貴方たちの考えくらい分かるわよ」とイイところで颯爽と現れるカーチャン(カーチャン!)。ちょっとミステリー仕立てで周囲の人間を不審な目で見ちゃうようなリードをされるんですけど、あいつはそんなことはしない!って理論も何もない突っ走った弁護がいっそ清々しい。無条件で信じてくれる相手がいるって、いいことですよね。
何年も前に初めて本多孝好さんの本を読んだ時の興奮が、今日読んだこの本でまた湧き上がってきたかのようです。あの時の感動をもう一度って、叶う事ってあるんだなぁ。たまらんね。