【斉藤洋】ドローセルマイアーの人形劇場

ドローセルマイアーの人形劇場 (グリーンフィールド)
好きな本ぼしゅう 3月のコメントより、Nさんのいっぱい紹介その3です。「ルドルフとイッパイアッテナ」とおんなじ作者さん。
ルドルフとイッパイアッテナはだいぶ小さな子供向けにひらがないっぱいの文章でしたが、こちらはそんな縛りもなく大きなお友達(俺だ!)にもより親しみやすくなっています。でもページもあっさりで、だいぶ易しめ。対象年齢は小学校6年生くらい?でも子供に読ませるなんて正直もったいないわ!
そんな感じで「ドローセルマイアーの人形劇場」をお送りします。
主人公は高校の数学教師なんですが、ある日空いた時間に喫茶店で暇を潰していると大きな荷物を背負った老人と出会います。老人はこれから幼稚園で人形劇をやる予定で、暇だったら見ていくかい?と誘われてなんとなく付いて行きました〜みたいな感じの導入になっています。仕事のブレイクタイムにちょっと変わった出来事と遭遇、いいじゃないですか面白そうじゃないですか。私も園児たちに混じって人形劇を見る様子を想像しましたが、思いのほか居心地が良さそうで憧れます。
そして老人が操る人形はまるで生きているように動き、命を吹き込まれたように喋りだし、私はその素晴らしい技巧にすっかり見入ってしまったのだった、てな感じで楽しかった人形劇の体験が綴られていきます。
次第に現実から離れ、不思議な出来事が日常に紛れ込んでくるこの感覚!毎日がちょっとした発見ばかりで、この数学教師の生活がなんとも羨ましく見えてくるからたまらんですね。途中で出てくる人形のゼルペンティーナをめぐるミステリアスな展開も、なんだか謎の先には面白そうなことが待っている予感がして読み進めるのが楽しかったですね。というか最初ゼルペンティーナの紹介箇所を読み間違えてしばらく男の子と思っていました。間違いに気付いたときの若干がっかりしていた自分がいましたがよく分かりません。
老人と人形たちが持っていた宝物のような秘密を共有し、好きな事を見つけて没頭する数学教師の姿に憧れない私じゃありません。迷いまくりの人生に希望を見せちゃう、ちょっとア・ブ・ナ・イお話です。ロマンですね。愛ですね。
ええーいこれは私のだ!と大人げなく小学生と取り合いの喧嘩をしても良いと思えるくらい、心惹かれる物語。ホント、子供だけに読ませとくのはもったいないですね。