【恩田陸】ネクロポリス 上(2日目)

ネクロポリス 上 (朝日文庫)



ネクロポリスの続きです。
お彼岸の時期になると本当に死者が訪ねてくるという土地「アナザー・ヒル」で起こる奇妙な事件はまだまだ続いています。そもそも毎年死人が現れる時点で十分奇妙なんですが、派手な殺人事件が起こったり、超常現象を利用した裁判を行ったりとだいぶ混沌のごちゃまぜ状態になってきています。不安と共に好奇心も掻き立てられて、あるのかも分からない事の真相を求めてページを捲る手にも力が入りますね。
そもそも今回のお話の大本だけ見るなら、死人が蘇る土地での不思議体験に翻弄される人々を描いた物語ですよね。何年も前に失踪した叔父さんに会えるかどうか試しに来た女性や、夫を何人も亡くして黒い噂があるのにわざわざやってきた夫人やなんかが出てきていますが、もうそれだけで十分ドラマを持ってます。これにさらに巷で話題の殺人鬼「血まみれジャック」と新しい殺人事件なんかも起こしちゃったりして推理ドラマもプラス、実によくばりさんな展開になっています。さて、あれこれ出てきたけれどもどうなる事やら…大人しく見ていくしかないんだけどね!
さて一応メインである死者の蘇りなんですけど、主人公さんの体質のおかげもあって割とちょくちょく訪ねてきてくれました。とりあえず蘇るのは本当っぽい雰囲気。主人公さんはたまに意識が吹っ飛んでどこか遠くの声や景色を見たり聞いたりし始めているんですけど、「あたしも見たわ!」と共感する人が出てきているので、お医者さんに掛からなくちゃいけないような病気とかじゃなさそうです。うーん、ここは不思議な事が起こる場所なんだなぁ!と納得しても良いですけど、なぜこれで密室トリックとか犯人のいない殺人事件とかの理論的な思考が必要な要素が出てくるのかが考えどころです。なんか全部裏があるのかしら。無理やり理屈付けちゃう?
例えば死人は本当に死んだ人が訪ねてきてるかっていうと…証拠があるというより勝手に早合点してると言えなくもない…です。雹が降って嵐になったのは自然現象、ついでに音楽が聞こえてきたのは…まあ音楽なら演奏すれば聞かせられるし。主人公さんがどこか遠くの、時代も違う景色が見えたのは心の病気。精霊を使った裁判で、来ていた雨合羽が爆発したように見えたのも心の病気で。…この状態でトリックを見破れとか正気の沙汰ではありませんな。早っ!俺の限界早っ!
そんなこんなでひとまず上巻を終了しました。話が進むにつれて、ますますミステリー色が強くなってきた印象があります。登場人物たちは事あるごとに互いの推理を議論し合っていますし、どっちがどっちか分からなくさせるような双子の入れ替わりネタは結構引っ張ってきます。最後のメガネに度数が入ってなかったのは予想出来すぎます。というか絶対やってくれるはずと期待してた。背筋が冷えるようなシーンですが思わずニヤッとした。くそぅ!むしろ作者さんはそこまで想定してるような気がしてならない!踊らされてるか!?
とまあいろんな事がよく分からん状態のままではありますが、小説のミステリーの良い所は別に自分が頑張らなくても最後のページまで行けば謎が解けているところです。実にラクチンです。今日はここまでですが、では下巻を一気に読んでしまいましょうか。