異能バトルは日常系のなかで

異能バトルは日常系のなかで (GA文庫)


その辺の高校生がなんかスッゴイ超能力に目覚めるけど、特に何事もなく日常を過ごすらしい。そのコンセプトは好きですよ。
だって世の中には超能力のバリエーションって沢山ありますけど、ライトノベルでその使い方って言ったら喧嘩することばかりじゃないですか。何故に能力に目覚めた少年は悪の組織と戦わねばならないのか。別に念力を使って気になるあの子のスカートをめくってもいいじゃないか。時に人を傷つける道具にされる火薬も、使い道を変えれば人類の発展に大きく寄与する存在へと変わります。能力にもいろいろな使い方があっていいと思うので、「無駄遣い」するのもそれはそれで面白いと思いますね。彼らはいったいどんな使い方をしてくれるのか楽しみなところであります。
まあ、あらすじを読んだ時点で漂うアブナイ臭いと設定から言って盛り上がる展開にもなりそうもない雰囲気から、おそらく辛い読書体験になりそうだと期待はしていましたが、どんな無駄遣いをするんだろうというささやかな望みくらいはしてもいいんじゃないかなという私の純情さえも踏みにじる徹底的な姿勢に思わず
( ゚Д゚) クソッタレがァーッ!!
歓喜の叫びを上げてしまいました。
素晴らしい。彼らの能力の無駄遣いぶりは素晴らしい。ただ単に超能力を身内で見せびらかして喜んでるだけで終わるという、徒労以外の何物でもないクソみたいな使い方しかしないのが素晴らしい。本当の無駄遣いは見る者の心に虚無だけを残していくのですね。
たいした盛り上がりもなく、能力を手に入れた恩恵も苦悩も微塵も感じさせることのないただの日常が続くお話は、登場人物の思考も私の思考も鈍らせていきます。そうだよ、日常ってのは平和で退屈なものだよねー。ヒロイン勢とか殺人的な超能力を手に入れたのに、「主人公くんがこう言ってたから…」みたいなクソみたいな理由で能力に関して考える事を放棄してしまっています。主人公くん任せで責任感ゼロ。えぇー…少しは自分で考えるとかしないのかよ。女は黙って男の後をついていくべきという精神の持ち主なのでしょうか。とにかく自分からは動かないので話は広がりません。アンタたち、男に利用されるだけの都合の良い女で終わっちゃうわよ…。
盛り上がりもなく話に広がりもなくて、ではいったい何が残りのページに書かれているのかというと、「厨二」的なネーミングセンスに関する作者の想いを、登場人物の姿を借りてひたすら語りつくしてます。 "堕天使の鉄槌は愚者へと振り下ろされるルシファーズストライク" 狂気にして凶器、最悪にして災厄、天をも堕とす破滅の力―― らしい。その厨二に対する熱い想いは伝わりました、だが何を言ってるのかさっぱり理解できねぇ。
いや、私は厨二病を馬鹿にしているのではありません。私だって頭の中はいつまでも厨二のまま、心だってときめいちゃう純情な男の子です。ただ作者の好きな厨二的センスとは相容れない存在なのだなと、この本を読んでようやく私は分かった気がします。求めるカッコ良さが違いました。
例えば、新幹線は速いからカッコイイのであって、カッコイイから速いのではないと私は思います。戦闘機は速くて強いからカッコイイ。カッコイイから速くて強いんじゃないんです。機能美を追求した、無駄のない造形がカッコ良さも備えているのです。しかし作者の求める物はまずカッコ良さであって、機能美などは二の次。とにかく見栄えのみを追求する過剰な装飾に私が眉を顰めるのも仕方のないことでしょう。でもまあ好きなものって人それぞれじゃん。明らかに無駄だろと思えるようなエアロパーツ付けて一般道を暴走するのとかいるじゃん。極限まで整備したパーツでサーキットを爆走してコンマ何秒を争うのとかもいるじゃん。どれにも好きな人っているじゃん?
私には私の求める厨二ストーリーがある!少なくともこの本にはない! "≪黒焰≫の新たなる領域ダークアンドダークネクストステージ" など永遠に俺には訪れないのだよ!
( ゚Д゚) チクショウがぁーッ!!