本日、サービスデー (1日目)

本日、サービスデー (光文社文庫)


ある日ムチムチボインの悪魔が現れたかと思ったら、「あなた今日はサービスデーだよ!ツイてるね!」と教えてくれたそうな。直後に天使がやってきて「何バラしとんじゃコラァー!!」と言いながら悪魔を追っかけて行ったそうな。どうやら今日はサービスデー。どんな人間にも一度はやってくるという気紛れ神様からの記念日。この日に願ったことは、なんでも叶ってしまうと言われています。
( ゚Д゚) はてさて、ではいったい何を願いましょうか?
「本日、サービスデー」、本日のコチラの本は、ホラー作家の朱川湊人さんが贈るホラーじゃなくてなんだか楽しげな雰囲気の短編集です。
これは題材が面白いですよね。よくあるタイプの話題ですけど、「なんでも願いが叶うとしたら何をお願いしますか?」と聞かれたら、それに答えるのが誰であれ何と言うのかちょっと気になりますよね。そこらのおっさんであれ 話題のアイドルであれ 聖人君子であれ、まあわざわざ尋ねに行くのは面倒かもしれませんが、すでに答えたアンケート用紙が目の前にあったら覗いてみるのも悪くはないんじゃないかなと思います。そしてそれが作家の朱川湊人さんであれ、ですね。この方の作品はいくつか読んだことがあるので、この人はどんなことを書いたのだろうと、ちょっとだけ個人的に興味を持ってたりもしましたけどね。
では作者さんが主人公をおっさんサラリーマンに据えて何を願わしたのかというと、うーん…それは読んで確認してくれと言ってしまいたくなるくらい、ちっさいことを沢山願っていました。満員電車で座れたラッキーとか、飯屋で注文してないものが来たけどサービスしてくれたよラッキー、とか。
まあそういう程度の、ささやかな方向のお話ってことですよ。だいたい雰囲気の見当は付けられるんじゃないんでしょうか。
そのささやかさの中でお話は起伏を加えて展開していくのですが、なんというかセンスが全体的におっさんです。冒頭でムチムチボインの悪魔が出てくるよとか言いましたけど、あれ、俺のセンスじゃねーから!この作品に出てくる女悪魔の雰囲気に合わせただけだから!頼む信じてくれ!
そりゃまあ、作者さん50近いし…
そんな感じで、おじさんのささやかな夢が詰まった普通の生活のお話でした。この場合の普通は、普通に目一杯仕事して昇進し、普通に家庭を持って暮らしていくことです。こんな事が今の時代にそぐわないなんて…なんて時代なんだ。
短編集ですのでまだまだ他のお話はありますが、うん、そのうち読む。