人生

人生 (ガガガ文庫)


人生…なんというシンプルで心に響くタイトル…
単純なのが逆にイマドキのライトノベルのタイトル群の中でも存在感を放っているような気がします。そして巻数を重ねると「人生2」や「人生3」のようにタイトルの後ろに数字が増えていくのでしょうが、まるでそのまま誰かの人生の積み重ねを表しているような深い味わいが出てくるのは何故でしょうか。最終巻の「人生」なんてものがいつか出てこようものなら、何か一生が終わるような物悲しいラストを否応無しに想像させます。その時だけは何故か数字じゃなくて「人生 終」とかなってたりしたら個人的に笑います。
「人生」、新聞部の企画として人生相談コーナーの担当を命じられた主人公くんが、3人の美少女を回答者に招きながら、迷える相談者からのお便りに淡々と答えていくお話です。
取り敢えず私に言えることは、人生なんてクソッタレということです。え、どっちの事?と聞かれたらどっちもです。
世の中いい事なんてなかなか無いし、苦労する事はいっぱいあるけどどう頑張ったら明るい未来があるのか分からないしで、マッタク生きていくのはなかなか大変ですなぁ。
お話が始まって直ぐに、初対面同士だったキャラがまるで60ページくらい一気にすっ飛ばしたかのような勢いで馴れ馴れしくなっているのを見て、人生の不合理さと思い通りにならない憤りに泣きました。とにかくかわいい女の子がキャッキャウフフする展開に早く持っていかなきゃ!取り敢えずキャッキャウフフさせとけば読者は満足するから、その間にネタとキャラを構築だ! …とばかりに梨乃とふみといくみという三人の女の子を、ぽーんと目の前に放り投げられた感じがしました。俺は哀しい。ぞんざいに美少女を目の前に置かれたことも哀しいけど、それに喜んで食い付いていけるだけの度量を持っていない俺が哀しい。かわいけりゃなんでもいいと言える男になりたい。
作者の前作、邪神大沼シリーズと構成はなんとなく似ています。途中でプチコーナーが入ってる辺りとか。あ、なんか作者さんの知り合いとかの繋がりで、本物のお笑い芸人が作中でさり気なく質問を寄せていたのは笑いました。突然現実の人間が混ざると、シュールで面白いですね。今後は読者からのお便りをツイッターやメールで募集して掲載してくれるそうです。読者参加型の企画ですか、盛り上がりそうですね。
読み終わってそっと本を閉じた後、静かに本棚にしまいました。