【仁木英之】胡蝶の失くし物 僕僕先生

胡蝶の失くし物―僕僕先生 (新潮文庫)


裕福な親の下で気ままなニート生活を送っていた青年が、ある日業を煮やした父親に叩き出され、見かけは美少女で自分の事をボクと呼ぶボクっ娘仙人さまと一緒に、様々な教えを授かりながら諸国漫遊の旅をするという中華ファンタジーなお話です。
うらやましいですね。死んじゃえばいいのに。
作中に漂うのんびりとした雰囲気と、どこかとぼけた登場人物のやり取りが楽しい作品。僕僕先生シリーズの3冊目となります。
前半の思わず漏もれてしまった私の本音から分かるかもしれませんが、この作品はあざといです。一部の隙もなくうらやましい境遇の主人公ヤロウに、可愛らしい外見をしててもしょっちゅうからかってきて頭の上がらない、でも時にはやさしい美少女仙人のコンビの何処に情状酌量の余地がある!
ありがとうございます。
ありがとうございます。
ああ、たまらねぇ。なんでしょう、この胸の奥から湧きあがってくる抑えるのに一苦労する感情は。そうか、これが殺意か。
そんな私の心を見透かしてか、今回のお話には僕僕先生を狙う暗殺集団というものが出てきます。はっきり言って上位の神様である僕僕先生は反則的なまでに強いので、初めっから暗殺者にやられてしまう気配なんて微塵もせずお母さんも安心です。ですのでこちらとしても心おきなく暗殺者側に肩入れすることができ、応援にも思わず力が入ります。是非とも僕僕先生にかわいい悲鳴の一つでも上げさせてもらいたいものですね。頑張れ暗殺者!
とまあこのように、私の様な者が共感しやすいキャラクターを的確に配置してくるあたり、作者の物語のセンスはなかなかのものがあります。それとなんだかんだ言って僕僕先生は可愛らしいですし、というか王弁俺と変われ!俺も僕僕先生とわっちわっちする! …とまあキャラクターに愛着も湧いたりなんかしまして実に楽しいお話となっておりました。
今回仲間になった暗殺者の劉欣が、王弁に本気でイラッと来て殺そうとする度に思わず笑ってしまいました。だって、気持ちがめっちゃ分かるんですもの!ククク…