トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ

トロイメライ 唄う都は雨のち晴れ


19世紀の琉球王朝(現沖縄)の最後の繁栄をめっちゃ面白可笑しくして描いた「テンペスト」、と舞台を同じにする外伝的作品「トロイメライ」の続編です。ここ大事! 後ろに「トロイメライ2」とか数字を付けてないから分かりにくいね。
本日はトロイメライの2巻、唄う都は雨のち晴れよりお送りいたします。作者の池上永一氏が続編を出した珍しい作品です。というか、もともと連作を意図して作られているので、トロイメライの1巻でも2巻でもこれで終わり!と感じさせるような締めのお話はありませんがね。
さてテンペストの外伝とは言うけれど、主人公と主要な登場人物はトロイメライのオリジナルでありまして、話の補助的な役割でテンペストの登場人物は出てくる程度なので読んでいなくても楽しめる作りとなっております。ただしテンペストを予め読んでおくと大いに楽しめる作りになっているのは否定できません。読んでる俺はもちろん楽しい!ヘッヘッヘ…
19世紀末の那覇で岡っ引きになったばかり武太が仕事と人情の狭間で四苦八苦しながら遭遇する、当時の情勢と風土を色濃く反映した様々な事件が綴られていく連作短編集になっております。大いに可笑しく、少ししんみりといった匙加減。
雰囲気的には前作と変わらぬ面白さを保っていますが、個人的には少しずつ作者さんのリミッターが外れてきてるように感じましたね。まだまだ冷静な段階だが、俺は感じる…!極一部の濃過ぎるキャラクターが物語を破壊せんとばかりに自己主張し始めるのを! まあ魔加那の事ですけどね。
心なしか文章の方もフリーダムさが増えているように感じます。実に良い兆候ですね。私は作者さんがもっと自由にやってくれた方が楽しいですから。ただ本気を出すとスゴイ事になっちゃうからな…気を付けないと…。
昔の沖縄の情景を事細かに、それでいて何とも軽やかに描写する文字運びは池上さんの魅力が満載です。そして相変わらず笑いのセンスがたまらなく好きです。おそらく続きがまだ出ると思われますが、なんともまあ楽しみなことですよ。
あ、北崎倫子は出てきませんでした。