統ばる島

統ばる島


2ヵ月前に発売されているの知らなかった…。まあ定期的に「池上永一」で検索するしか私は新しい情報を得る術を知らないから仕方ないね。
というわけでこんばんは。本日は私の最もお気に入りの作家さんである池上永一氏の新刊よりお送りいたします。今日は良い日です。
こちらの統ばる島(すばるしま)は、作者さんの真骨頂ともいえる題材「沖縄」を舞台にした連作短編集となっておりまして、沖縄県八重山列島にある島、「竹富島」「波照間島」「小浜島」「新城島」「西表島」「黒島」「与那国島」「石垣島」の8つの島をそれぞれ舞台に8つのお話が語られるという演出がされています。小洒落れていますね。
ほとんどは現代のお話でして、各島々の風土を反映した出来事の中で奮闘する人々を、作者の持ち味である軽妙な語り口とちょっとしたユーモアを交えておもしろ楽しく綴っていくものでした。
もう沖縄風俗の描写のきめ細かさは他の追随を容易には許さないクオリティ。語られる文章に混ぜられる沖縄独特の方言や沖縄文化のさりげなさは、まったく読めない漢字であってもすんなりと馴染めてしまうほどに読みやすいです。例えば「種子取祭」と書いて「タニドゥル」と読む。お祭りの名前ですね。「群星御獄」は「ムリブシイウタキ」。御獄は神様を祭ってお祈りをする場所の一般名称で、○○御獄という場所が沖縄の各地に存在するそうです。ライトノベルによくあるものとは方向性の違うけど、負けず劣らずの物凄い読み方をさせてくるのが沖縄文化というものらしい。
そして全体的にとても静かで美しく構成を整えてあるという印象がしました。作家としての経歴も大分重ね、落ち着いた大人の雰囲気というものを身に纏ったかのよう。池上さん、これからの方向性はそっちなのね。
昔の作品に出てきていたストーリー展開を破壊しつくすような強烈な沖縄人たちが、若かりし頃の情熱だったというように今後鳴りをひそめたりしたら個人的に寂しくもありますね。あとは訳が必須な沖縄方言も大分出番が抑えられているようなのも寂しい。好きなんだけどなぁ…。「アガーッ(いてー)、コンマーハイットーン(急所に入った)」とか響きがおもしろいんです。
あ、そういえば今回北崎倫子が出てなかったな!いろんな池上作品に出てくる謎の人物。というか無理やりでも出してくる作者の謎の拘り。登場しない作品もぽつぽつあるんですよね。さてはうっかり忘れたな!